2013年12月26日
異和
「異和」と書いたが,普通は,「違和」と書く。ただ,なぜか,この言葉が気になる。
僕の記憶に間違いがなければ,吉本隆明は,『初期ノート』から,「異和」を使っていて,編者の川上春雄が,それに「まま」とルビを振っていた記憶がある。
吉本は,若い頃から,癖なのか,意識してなのか,「違和」ではなく,「異和」を使い,最後まで使いとおした。その意図は,もう確かめようはないが,
異和
と
違和
では,ニュアンスが違うのではないか。
「違」は,違う,悖る,背く,去る,遠ざかる,といった意味で,
違法,違憲,違反,違背,等々,
といったように,基準や定め,掟に背くというニュアンスが強い。
「異」は,異なる,違う,他と異なる,といった意味で,
異常,異心,異形,異郷,異見,異才,異能,異性,異名,異物,異腹,異邦,異変等々,
異質さというか,他から際立つというニュアンスがある。
「違う」は,平面的なのに,
「異う」は,立体的な感じがする。
あえて推測すれば,「違和」は,波立ちなのに,「異和」は,屹立,巍巍とした山並みの感じである。突出しているといってもいい。だから,「異和」の方が,違和の感覚が際立つ。
まあこれだけの話なのだが,自分の感覚を言語に置き換えるとき,ありきたりの言葉では,うまく言い尽くせない感じがすることがある。なにせ,思いの方が,言語の20~30倍のスピードで走り去っていくのだ。そのときその感覚を捉えそこなうと,すぐ思いと言葉がずれていく。
類語辞典を引いても,それは平面的な連想だから,ただ言い換えているだけで,言いたいことを,的確に表現する言葉を探すときには,あまり役に立たない。
それなら,いっそのこと,アナロジーかメタファーか,の方がなんとなくニュアンスが伝わる。
情報には,
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/prod05111.htm
でも書いたが,
コード変換できる言語化可能なコード情報
と
コード変換できない雰囲気とか文脈といったモード情報
とがあるというが,まさにその通りで,デジタルとアナログと置き換えてもいい。アナログとは,まさにアナロジーといってもいいので,メタファーやアナロジーが伝えやすいのは当然だろう。
それは思いを絵にしたり,ビジュアルにしたりするのに近いかもしれない。
ところがビジュアルにすると,そこで,また少しずれる。
ヴィトゲンシュタインではないが,
およそ言いうることは言い得語りえないことについては沈黙しなければならない,
のか。それには,少し異和がある。
それについては,
http://blogs.dion.ne.jp/ppnet/archives/11396602.html
にすでに書いた。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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