2014年01月27日
絶滅
フレッド・グテル『人類が滅亡する6つのシナリオ』を読む。
正直言って,大変読みにくい。自分で,いくつかの学説を整理して,シミュレーションした世界を,それぞれについて描いてもらった方が,危機感は,イメージしやすい。正確を期すためか,個々の学者の考えをいくつも,フォローしていくために,肝心の危機が,伝わりにくいのが難点。よほど科学の個々の学説の違いに興味ある人以外は,ついていくのが大変だろうと感じる。
人類の滅亡と地球の滅亡とは別なので,本書はあくまで,地球が存続するが,人類が滅亡の危機に瀕するシナリオということになる。
著者は言う。
私は以前,プリンストン大学教授のスティーヴン・バカラに「カナダやアラスカ,シベリアの永久凍土が解け,地中に閉じ込められていたメタンや炭素が大気中に放出されたらどういうことになるか」と尋ねたことがある。彼の答えは「あらゆる種類の怪物が姿を現す」だった。
この本は,その「怪物」について書いた本だ。
切り口は,6つ。
スーパーウイルス
大量絶滅
気候変動
生態系
バイオテロ
コンピュータ(サイバーテロ)
これですべてかどうかはわからない。ただ,いずれも,人類に起因する。一番重要なのは,
気候変動,
と著者は言う。
そして,大量絶滅と気候変動と生態系は,リンクしている。そのキーワードは,
ティッピングポイント,
つまり,ゆっくりと予測可能な変化をしていたシステムが,突如急激な予測外の変化を始める時点のこと。たとえば,
すでに思い荷物を背負ったラクダは,ワラを一歩乗せただけで背骨が折れる,
という,その瞬間のことらしい。そして,その瞬間を過ぎてしまったら,
最早戻す方法は全くない,
というのである。まるで,経営や組織について言われる,湯でカエル現象,
カエルを熱湯に入れるとすぐに飛び出すが,冷たい水にいれて徐々に水温を上げていくと,温度の変化に気づかず,やがて暑い湯の中で死んでいく。緩やかな変化に気づかず,いつしか手遅れなることのたとえ,
そのもののようだ。しかも,地球規模の変化には,何十年,何百年,何千年とかかるはず,というのが常識だとすると,もっと短いという説がある。
恐竜の絶滅などの大きな出来事も,数日や数週間といった,…短い期間で起きていた可能性がある,
と。ティッピングポイントの目安は,氷河である。例えば,
グリーンランドには,もしすべて解けて海に放出されれば海水面を6メートル以上押し上げる,
(南極大陸の氷床がすべて解けると)海水面を約80メートル押し上げる,
と言われる。いまのままのペースで解けていくとすると,300年という。しかし,ティッピングポイントを超えたとすると,もはや取り返しがつかないのである。
24億年前,藻類が放出した大量の酸素によって,当時繁栄していた嫌気性バクテリアが一気に滅びた,
とされる。そして,
酸素濃度の変化自体はゆっくりと進行したのだが,状態移行は急激だったのではないか…。ブレーカーが落ちるのに似ている。酸素が少しずつ増えても,ある時点までは何も変化がないように見えるが,突然スイッチが入ったように様相が激変するのだ。
そのスピードが速すぎれば,変化に対応するいとまがない。いま,そのティッピングポイントに近づいていないという保証はない。では我々はどうすればいいのか。
ティッピングポイントへの到達を未然に察知し,防止できるようにする,
しかない,のである。それにしても,国家にもそれはある。いま,わが国は,その,
ティッピングポイント,
に差し掛かりつつある気がしてならない。これは,自分たちでコントロールできるはずなのだが…!
参考文献;
フレッド・グテル『人類が滅亡する6つのシナリオ』(河出書房新社)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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