2014年02月07日

眼鏡


バロン=コーエンは,共感できる(Empathizing)脳とシステム(Systemizing)脳があるという説を提案しているという。

共感とは,他人が何を感じ,何を考えているかを知り,それに適切に反応することをいう。共感できる脳は相手の感情や心の状態を知って心を動かす活きをすると仮定されるので,心の理論が働くことに通じる,という。

心の理論(theory of mind)というのは,ひとはそれぞれ自分の心を持っていてそれにもとづいて行動していることができることを言う。つまり,

心の理論が理解できるようになると,自分の心と他人の心は違うことがわかるので,自分と他人とは,感情,意思,考えなどが違うことがわかる。大体四歳くらいで理解できるようなる(一歳でもできるという指摘もある)らしい。

これが社会を形成してきた人の共通の特徴とされている。

一方システム化に優れた脳は,システムを分析したり検討することが得意で,システムの隠れた法則に気づいたり,新しいシステムを創り出す傾向を持つ。心の理論とは縁遠いことになる,という。

バロン=コーエンは,二つの脳について,

E(共感できる脳)とS(システム脳)について,

EがSよりまさるEタイプ,SがまさるSタイプ,バランスの取れているBタイプに分けたが,95%はBタイプであるとしている。そして極端に人間関係が苦手なアスペルガー症候群の人をSタイプとした。

しかし,それを立証する生物学的マーカーは見つかっていない。むしろ,高橋惠子氏は,

個性と障がいの線引きは簡単ではない。ある社会的ルールを知らないことが本人を苦しめたり,不利にする,(中略)個性を尊重し個性を活かすことが…根本原則である,

という。妥当だろう。所詮仮説でしかないもので,人を類別し,人を理解した気になることは,浅薄だと,僕は常々思っている。

仮説というのは,所詮,仮の説明概念である。それを持ってみると,現実がよく説明できる。あくまで,仮にそう説明するとわかりやすいというだけだ。当然別の眼鏡を掛ければ別のものの見え方がする。

ロジャーズは,(これもたびたび引用するが)共感について,

「あくまで……のごとく」という性質(“as if” quality)を決してうしなわない

で,クライアントの私的世界をそれが自分の世界であるかのように感じとる,ことだと言っている。ロジャーズには,それは錯覚かもしれないし,思い過ごしかもしれないし,思い込みかもしれないことを,よく自覚していた。

それを失ったら,単なるきめつけに過ぎない。

右脳左脳で切り分ける俗説もこれに似ている。

これで思い出したが,前にも書いたことだが,

人の認知形式,思考形式には,

「論理・実証モード(Paradigmatic Mode)」



ストーリーモード(Narrative Mode)」

がある(ジェロム・ブルナー)があるとされている。

前者はロジカル・シンキングのように,物事の是非を論証していく。後者は,出来事と出来事の意味とつながりを見ようとする。

ドナルド・A・ノーマンは,これについて,こう言っている。

物語には,形式的な解決手段が置き去りにしてしまう要素を的確に捉えてくれる素晴らしい能力がある。論理は一般化しようとする。結論を特定の文脈から切り離したり,主観的な感情に左右されないようにしようとするのである。物語は文脈を捉え,感情を捉える。論理は一般化し,物語は特殊化する。論理を使えば,文脈に依存しない凡庸な結論を導き出すことができる。物語を使えば,個人的な視点でその結論が関係者にどんなインパクトを与えるか理解できるのである。物語が論理より優れているわけではない。また,論理が物語りより優れているわけでもない。二つは別のものなのだ。各々が別の観点を採用しているだけである。」(『人を賢くする道具』)

要は,ストーリーモードは,論理モードで一般化され,文脈を切り離してしまう思考パターンを補完し,具象で裏打ちすることになる。

だから,共感できる(Empathizing)脳とシステム(Systemizing)脳は相互に補完し合っていることになる。95%から外れた人を,個性と見ることが出来なければ,所詮個性などどこにもない。

僕は個性は,百人いれば,百個の個性があると思っている。

問題は,人と同じ尺度だけで測っているから,それが見えない。百個違う尺度がいるのだ。それだけのことだ。

そしてこれが理解できない人は,

ブレインストーミング

の意味が永久にわからないだろう。

百個の個性とは,百個の異質さなのだ。それが前提でなければ,ブレインストーミングなど活かせっこないし,

キャッチボール

によって生み出される,異質な何かなど見えはしない。

そこにあるのは,創造性のとば口なのだ。


参考文献;
高橋惠子『絆の構造』(講談社現代新書)
H・カーシェンバウム&V・L・ヘンダーソン編『ロジャーズ選集』(誠信書房)
ドナルド・A・ノーマン『人を賢くする道具』(新曜社)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm




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posted by Toshi at 12:21| Comment(2) | | 更新情報をチェックする
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