2014年02月18日

リソース


先日,日本産業カウンセラー協会・神奈川支部の「ブリーフセラピー・ステップアップコース」(講師;森俊夫先生)に参加させていただいた。

ブリーフ・セラピーのステップアップということで,実践的なテーマが取り上げられ,今回は,リソースがメインでワークが行われた。

キーワード風に言うと,

ソリューション・フォーカスト・アプローチにおいて,傾聴とはリソースとして聴く(問題として聴くのではなく)

ということになる。で,立て続けに,

クライアント役の「最近の最大に困ったこと」

を聴き,そこからリソースを見つけて,コンプリメントとしてフィードバックするワークを行った。

ソリューション・フォーカスト・アプローチでは,クライアントへのフィードバックには,

コンプリメント

ブリッジ

提案

がある。

コンプリメントは,第一に,クライアントにとって重要なものを肯定する。第二に,クライアントの成功と長所を肯定する。

コンプリメントは,意味的には,ねぎらうこと,敬意を表することだが,あくまでクライアントの言葉や行動にもとづいた事実に根ざしていなくてはならない。やり方としては,直接的なコンプリメントと間接的なコンプリメントがある。

直接的なコンプリメントは,肯定的評価(「それはすごいですね,よくやれましたね」)と肯定的反応(「わあ,すごい!」)がある。

間接的コンプリメントは肯定的な質問である。
①望まして結果について更に「どうやってそれをやったんですか」と質問する,
②関係を通して,「それを聞いたらお子さんはどう反応するでしょうね」と,肯定的なものを暗示する質問,
③何が最善かはクライアントがわかっていることを暗示する,「どうしてそれをしたらいいとわかったんですか」と質問する。

コンプリメントは,言語的だけではなく,非言語的な頷き,表情,身振りなどの反応も含まれる。森先生曰く,(自分には)頷きだけで何十種類ある,と。

ブリッジは,コンプリメントと提案を結びつける,提案の理由づけである。提案したことをしてもらうには,リソースを活かすのだということを,理由づけするが,そうなると,コンプリメントが,ピンポイントを突いてないと,ブリッジは,不発になる。

提案は,クライアントにしてもらうことを提案する。提案には,行動提案と観察提案がある。

森先生曰く,

コンプリメントは,ブリッジになる,

と。いいコンプリメントは,クライアントの思ってもいなかったリソースを突く。それは,リソースのピンポイントを突いているからだ,と。

コンプリメント自体が目的ではない。コンプリメントは,介入である。介入は,「こうすればこうなる…」という変化を想定してする。コンプリメントも同じである。

なぜそのコンプリメントをするのか
   ↓
その後のクライアントの良い変化を導くためである
   ↓
そのためには,どこを突けばいいのか
   ↓
それは,どこを変化させたいのか,とイコールになる。

そこにコンプリメントを入れることによって,そのリソースが生きてくる,そのようにコンプリメントをどうすればいいのか,というように変化が想定されたコンプリメントでなければならない。

それは,当然,クライアントの目指す解決像をつくるのに役立たなければならない。

結果として,そういうセラピストの頭の中の動きと,クライアントの頭の中の動きが同時に,一緒につくる,つまり,

セラピストが,このリソースがあれば解決像が実現できる

と思うことが,同時に,

クライアントも,これがあれば,解決像が実現できる,

と思えるようなものでなくてはならない。

だから,ワークで,リソースを見つけることは,多寡はあっても,それほど難しくない。

出来ている具体的なものを,

僅かな変化も見逃さず,

拾い上げていくことはできる。しかし,それは,

あくまで食材で,

それが,どういう変化に,

どう機能するかを見きわめて,ピンポイントで言語化して,

コンプリメント,

として提示する,そこには確かに森先生の言われるように,「クリエイティブ」がいる。ただリソースを並べ立てても,クライアントにとっては,いつも耳慣れていることだけかもしれない。それを,

どう変化につながるリソースとしてフィードバックできるか,確かにセラピストの技量が問われる。

それは,

現状出来ていることではなく,

またいま顕在化していることでもなく,

まだ現れてもいないし,クライアントも気づいていない,

クライアントの隠された可能性,

まさに力の源泉を探り当てることなのだから,

メタ化(あるいは一点にフォーカス)

想像力

見通す力

が必要になるようだ。

最後にやったワークショップは,

こいつだけは絶対許せない人

をクライアントに語らせ,カウンセラーも一緒になって掘り下げて,その後,その許せない人を

コンプリメント

というか,その人のリソースリストを作る,ということを試みた。そこで必要なのは,

リソースを聴く,

だが,もっと必要なのは,価値や是非や好悪の判断を手放して,

その人に焦点をあて,

その人がその人としてあるのは何か,

その人がさらにその人らしくあるには何が不可欠か,

を見抜く視点のように思えた。

これは,まさにコーチの姿勢とリンクしていく。しかしここまでの見通しをもってリソースの見極めををしているかどうか…!


参考文献;
ピーター・ディヤング&インスー・キム・バーグ『解決のための面接技法【第三版】』(金剛出版)

今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm


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