普通
普通には,広く一般に通じるという意味と,どこにでも広く見受けられ,つまりありふれている,の意味がある。しかしこれを英訳すると,
常態,あるいはレギュラーという意味の,
Normal(反対は,abnormal)
と,共通というか共有するという意味の,
Commont(反対は,uncommon)
と,いつものの意味の,
Usual(反対は,unusual)
のほかに,
Ordinary(反対は,extraordinary)
というのがある。別に英語に強くないので,あてずっぽうで言うが,四者の区別は,厳密にはつかないが,average,つまり並みの,ありふれた,というか,特別ではないというか,平々凡々,というのが,Ordinaryにふさわしいような気がしている。
それは,勲章なのだ,とこの頃思う。
ルイス・キャロルの,『鏡の国のアリス』に登場する,赤の女王が,
その場にとどまるためには,全力で走り続けなければならない
It takes all the running you can do, to keep in the same place
と言ったが,その平凡さを保つのは,実はそんなに,容易ではない。水面下で,ばたばたと足をばたつかさなくては,その場にとどまりつづけることは難しい。
ワナメーカーというアメリカの実業家が,
自分の仕事を愛し,
その日の仕事を
完全に成し遂げて
満足した軽い気持ちで
晩餐の卓に帰れる人が,
最も幸福な人である
と,言っていた言葉は,彼の理想なのか,現実なのかはわからないが,そういうニュアンスが読める。
僕の父親は,官吏で,二三年毎に,全国転勤しまくったが,幸か不幸か,職住接近で,5時少し過ぎには官舎に帰ってくる毎日だった,と記憶している。
地方検事
が職業だったが,昨今は知らず,その当時は,地方では名士らしく,転勤の度に,当時の国鉄の駅長室に案内されて,そこで時間待ちをしていた。確か,赤絨毯が引き締められていたように覚えている。そこだけだったのかどうかは記憶にないが。
いま振り返ると,仕事は精神的には激務だったのではないか,と思う。中には父の関わった,未だに判例になっているらしい刑事事件もある。引いてみたことはないが,ネットでも調べられるらしい。閑話休題。
要は,そういう仕事と家庭とが,どういうふうに父の中でバランスが取れ,(子供心にも)日々を淡々と過ごしていったのか,がいま振り返ると,結構興味深い。
ありきたりの日常は,失ってみて初めて気づく。そのリズムというか,テンポというのは,そのときにはなかなか気づかない。しかし,だらしなく過ごしているのとは違う,
緊張感,
というか,張り詰めたものが,日々ある。
日々是好日,
とはこれを指すのだろう。それは,一日一日を,かけがえのない,他に換えられぬ一日として,
時々刻々
を大切に生きる,と言うことだ。それは,そんなに易しくはない。
一瞬一瞬の振る舞いを,
考えながら,意識しながら,生きる。
しかし,それは日々是好日して,という意味ではない。
自己完結させた,内向きだけでは突然,外から壊される恐れがある。それを防ぐために,自分の状況,時代を監視しつづけなくてはならない。いま,その普通が,普通であり続けることを可能にしない時代が来つつある気がしてならない。
戦前もそうやって普通にした日々が,気づくと,いつのまにか,死地にいさせられる状況になっていた,そんな感じだとよく聞かされる。
そういえば,戦傷して帰国した父が,思い出したように,ぽつりと口にした言葉は,
酷いことをしてきた,
という言葉だ。意図しようとしまいと,他国へ侵略するということは,そういうことだ。
上海敵前上陸で,ほぼ全滅した部隊をかろうじて生き残った者の,警告だったと思えなくもない。そうした経験者がいなくなると,こういう時代が来る。
その中から,父は,改めて司法試験を受け,人生をやり直して,やっと手に入れた平々凡々だったのだ。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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