2014年04月12日

多宇宙


青木薫『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』を読む。

人間原理については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163436.html

宇宙のあり方については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163082.html

でそれぞれ触れたが,ここでは,「人間原理」をキーワードに,最新の宇宙論の最前線を紹介している。

人間原理とは,

宇宙がなぜこのような宇宙であるのかを理解するためには,われわれ人間が現に存在しているという事実を考慮に入れなければならない,

つまり,人間が存在するべく宇宙がつくられている,という目的論的な考え方である。「はじめに」で,著者が言うように,

たしかに,もし宇宙がこのような宇宙でなかったとしたら,われわれ人間は存在しなかったろう。地球も太陽も存在しなかっただろうし,銀河系も存在しなかっただろう。

しかし,なぜそういう考えが出てきたのか,著者は,本書の目的を,

人間原理とはどんな考え方なのか,
なぜそんな考え方が生まれたのか,
その原理から何が出てきたのか,

を考えることだとしている。

この考えが出てくる背景には,アインシュタインの,

神が宇宙を作ったとき,ほかの選択肢はあったのだろうか,

という問いである。もちろん,神は,言葉の綾である。言い換えると,

あれこれの物理定数は,なぜいまのような値になったのか,

となる。そこで,著者は,基本的な四つの力(重力,電磁力,強い力,弱い力,)に関わる,二つの例を挙げる。

ひとつは,重力である。

もし重力が今より強かったら,太陽やその他の恒星は,押しつぶされて今より小さくなるだろう。強い重力で圧縮された中心部の核融合反応は急速に進み,星はすみやかに燃え尽きてしまうだろう。地球やその他の惑星も,いまよりサイズは小さくなり,表面での重力は強くなるため,われわれは自重で潰れてしまうだろう。逆に,もし重力が今より弱かったなら,天体のサイズは大きくなり,中心部の核融合反応はゆっくりと進み,星の寿命は延びるだろう。

いずれにしても,地球上にわれわれは存在しない。

二つ目は,強い力と電磁力との強さの比である。

もしも強い力が今よりも弱かったなら,電気的な反発力が相対的に強くなり,陽子はそもそも原子核の内部に入ることはできなかっただろう。その場合,初期宇宙の元素合成の時期に,水素原子核(陽子)よりも大きな原子核は生じなかっただろう。この宇宙は水素ばかりの,ひどく退屈な世界になっていたはずだ。逆に,もし強い力が今よりも強かったなら,陽子同士が結びついてしまい,水素(つまり単独の陽子)は早々に枯渇しただろう。水素の存在しない宇宙は,この宇宙とは似ても似つかないものになっていたはずである。

つまり,物理定数が今の値でなかったとしたら,宇宙の姿は,いまの宇宙ではなかった,ということである。

では,なぜ今の値なのか。その問いに,ハーマン・ボンディは,コインシデス(偶然の一致)を示して,議論を提起した。本書では,3つを紹介している。

①電子と陽子の間に働く電磁力と重力の比が,1040
②宇宙の膨張速度の目安であるハッブル常数から導かれた「長さ」(大雑把な宇宙の半径)と電子の半径(核力の到達距離)の比が,1040
③宇宙の質量(宇宙の質量密度×半径の三乗)を,陽子の質量で割った,宇宙に存在する陽子(あるいは中性子のような,電子と比べて思い粒子)の個数が,1040

これに対して,人間原理を打ち出してきたのが,ブランドン・カーターなのである。そして,

コペルニクスの原理,

つまり,人間が宇宙の中心にいる,

ことを否定した考え方に,過度に拡張しすぎている,として,

a.われわれが存在するためには,特別な好都合な条件が必要であること,
b.宇宙は進化しており,局所的なスケールでは決して空間的に均質ではないこと,

を理由に挙げた。そして,ボンディの挙げたコインシデンスを,「コンベンショナル(普通)」な理論で説明するには,

人間原理,

を受け入れなければならない,といったのである。ボンディのコインシデンスの①,②については,すでに説明がつく。問題は,③である。カーターは,こう言う。

宇宙は(それゆえ宇宙の性質を決めている物理定数は),ある時点で観測者を創造することを見込むような性質を持っていなければならない。デカルトをもじって言えば,「我思う。故に世界はかくの如く存在する」のである…,

と。これは,著者が言うように,

「この宇宙の中で,存在可能な条件を満たされた時期と場所に」存在しているという話ではすまず,「そもそも宇宙はなぜこのような宇宙だったのか」という問題と関わっている,

のである。しかし,カーターは,話をこう展開する。

物理定数の値や初期条件が異なるような,無数の宇宙を考えてみることには,原理的には何の問題もない。

もし,宇宙が無数にあるなら,「知的な観測者が存在できるような宇宙は,世界アンサンブルの部分集合に過ぎない,
とするなら,

われわれは無数にある宇宙の中で,たまたま我々の存在を許すような宇宙に存在している,

というだけのことになる。このカーターの提起の,

世界アンサンブル,

という考え方は,宇宙のインフレーション理論,

宇宙誕生の10-36秒後に始まり,10-36秒後には終わった(中略)。その一瞬の間に1030倍にも膨張した,

とされる。そして,

宇宙誕生は一度きりの出来事ではない,

というのが,物理学者の考え方なのだ。とすると,そこから,自然に,

宇宙はわれわれの宇宙だけではない,

という,多宇宙ヴィジョン,

が生まれ,膨張する宇宙の中に,

海に浮かぶ泡のような領域…を,泡宇宙か島宇宙,

と呼ぶ。そして,

われわれの宇宙は,無数にある泡宇宙のひとつに過ぎない。いわゆる「地平線宇宙」―どれだけ高性能の望遠鏡が開発されようとも,そこから先は未来永劫決して見ることができないという意味での「地平線」の内側―

にいる,ということになる。宇宙の理論の,

多宇宙ヴィジョンは,ほとんどデフォルト,

と著者は言いきる。人間原理は,この時点で,反転し,人間による,観測選択効果になった,と。

いま,アインシュタインが言った,

宇宙は,ある必然性があってこのような宇宙になっている,

さまざまな定数の値が,他のどの値でもなく,この値でなければならぬ,

という理論を目指して,科学者は様々な仮説にチャレンジしている。


参考文献;
青木薫『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』(講談社現代新書)




今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

posted by Toshi at 05:26| Comment(2) | 書評 | 更新情報をチェックする
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Posted by 激安ゴルフクラブ at 2014年04月12日 12:04
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