裏切り


裏切り

正直,この言葉が,あまりピンとこない。というか,こなかった。

辞書的には,

①敵に内通して,主人または味方に背くこと,
②約束・真偽に反する行為をする。人の期待に反する,

とある。

期待に反する



期待を裏切る

とでは若干ニュアンスに差がある気がする。人の期待に反することは,一杯あっただろうが,反しようと思ってするというより,できなかったということが実態で,裏切る,というニュアンスには遠い,

期待外れ,

な程度というのが,主観的な印象だ。

期待を裏切る



期待外れ

では,ずいぶん印象が違う。背負わされた「期待」が,オリンピック選手のそれと,僕のそれとの違い,に起因するのだろう。

自分では,細かなことはあるかもしれないが,決定的に人を裏切ることの出来るような,ある意味で大物ではなく,器量の小さい人間だと思うからだ。

ただ,そう考えていて,不意に思い出したことがある。

昔,労働組合,というほどのことはないが,理不尽なトップへの抵抗という意味で,労働組合をつくる羽目になったことがある。いつの間にか首謀者になっていて,その当時の下宿屋まで,調査の人が調べに来たということがあった。ま,組織側がやったらしいのだが,そんな仲間の中で,途中から抜けたのならいいが,最初から,仲間面して,内部のことをいちいち,報告していた人がいたことを,後日に知った。

これって裏切りなんだろうな,

と,思い出したのだ。しかし,この人は,某映画会社の労働争議の時,組合委員長なのに,経営側に通じていたということで,ある意味有名な人だったらしい。

それを聞いたとき,ふと,何だろう,不遜ながら,

可哀そう,

と感じた。たぶん,身の置き所がないのではないか。会社からは,重宝かも知れないが,

重んじられること,

はまずない。人として信用できないからだ。当然,組合側からも,これは,

軽侮と憎悪,

の対象になる。どこにも身の置き所がないのに違いない,と人としての寂しさを感じた。もう,ご存命ではないかもしれないが,その人についての記憶では,たまたま,

ガリバー旅行記,

を文庫版で読んでいて,それを見て,ニュアンスは忘れたが,原書で読まないのを,

憫笑,

された記憶がある。そう言えば,洋書を読む人で,著名な彫刻家の御子息なんだと,後日仲間の一人から聞いた。

その憫笑は,結構効いたが,しかし,人として,どうなのよ,と言いたい気持ちが,いまならある。

価値観が違う,

と言われればそれだけのことだが,僕の印象では,

信念として通報役,

を買って出た感じではない気がしている。その人の事情を知っているトップが,強いたのではないか,というような憶測をしている。それほどに,日常は,小太りの,気のいい人に見える,人なのだ。

気のいいのは僕なのかもしれないが,それほど怒りや反撥を感じた記憶がないのは,大した人数でもない,ちっぽけな組合づくりの活動にまで,そういう人が,役割として登場する,と言うのが,どことなく滑稽だったからかもしれないし,逆に,そのことを知ってからは,組織の凝集度が高まったと感じたせいかもしれない。

しかし,もうかなり昔のことなのに,裏切りというなら,そのイメージで,どこか,

寂しい,

ひとりぼっち,

というイメージがある。それは,僕の側の勝手な忖度かもしれないが,

誰にも相手にされない,

という感覚である。それは,たぶん,僕自身が大切にしている,

信義,

律儀,

に反しているので,僕の思いを投影しているだけかもしれない。




今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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