2014年06月07日

すみません


つい言ってしまわないか。

すみません

と。大概曖昧だ。謝る意思を示すときは,

ごめんなさい,

と言う。しかし,すいませんは,ちょっとニュアンスを濁す感じがある。

すむ,

は,

住む,済む,澄む,清む,棲む,栖む,

と当てる。

すみませんは,語源的には,僕の見たものでは,

「澄み+ません」で,謝罪,感謝,依頼などで,「済みません」と書くので,「完了しない」とされることが多いが,違うのだという。

スミは,澄むが語源。かきまわした泥水が,時間経過とともに沈殿して清らかに澄んでくる。同じように,澄むはずの心が,澄まないのが,済みません,の語源,

なのだそうだ。

人から恩義を受けて,心がかき回され,いつまでも心の中が済まない,安定しない状態,

これが済みません,なのだという。

そう受け止めると,北山修氏が,こう書いていたのが,よく分かる。

「済みません」は,周辺や相手の状態がなかなかすまないという状況とともに,「御迷惑おかけして」「ご面倒をおかけして」と,相手にかけた迷惑が自分の心のなかで澄まない,落ち着かない,乱れている,という感覚や自体も捉えています。つまり,周りに濁りや乱れ,騒ぎを生じさせたことについて「すまない」と言い,相手だけではなく自分も内的にすんでいないことを進んで認め,謝罪の言葉としているわけです。それは対話の相手に向けられた謝罪であると同時に,澄んでいることを最高の規範のひとつとして共有する周りや周囲,つまり共同体に対し,自らのすんでいないという,浄化の不十分さを謹んで申し上げているのです。

そう考えると,あいまいさの中に,自分の側の落ち着かなさをも含めているということになる。その段階で,

謝罪,

の責任の所在を,相手にも分有させようとしている,と取れなくもない。

これを英語に訳そうとすると(確かではないが),

○感謝。 Thank you very much

○お詫び。I am sorry.   
     Excuse me

ネットで見ると,もっと細かく分けているのもある。

1相手の立場に関係なく使える表現(通常の表現)I'm sorry.
2「本当に申し訳ございません」と述べる時(通常の表現)I'm very sorry.
3「残念ながら,~です」という表現(丁寧な表現)Unfortunately, ~.
4会議に遅れる場合(丁寧な表現)Please excuse my lateness.
5たいへん地位の高い人に謝罪の意を述べる場合(丁寧な表現)A thousand apologies.
6「恐縮ですが,~です」という表現(やや丁寧な表現)I'm afraid ~.
7「ご理解お願いいたします」という言い回し(やや丁寧な表現)We hope you understand.
8ウェートレスがお客さんの注文を間違えた場合(やや丁寧な表現)I'm terribly sorry.
9本当に罪悪感を感じて謝る場合(やや丁寧な表現)I can't apologize enough.

まあ,ここまで細かに分けなくても,感謝と謝罪が,含まれているのでいいのだが,それだけの含意を,

すいません,

の一言ですませてしまうということは,

謝るのでも,

詫びるのでも,

礼を言うのでも,

ない,結局両者の文脈に強く依存していて,その微妙なニュアンスを,文脈まかせにする,

すいません,

なのだと思う。最近,僕が似たような便利な言葉で,多用しているのは,

恐縮です,

という言い方だ。これも,「すいません」よりは少し軽い,

ちょっとした感謝,

ちょっとしたお詫び,

ちょっとした謙譲,

を含めている。便利だが,本当に詫びなくて話せない時に,

ごめんんなさい,

が言えないということは,本当にお礼を言わなくてはならない,言いたいときに,

ありがとうございます,

が言えない,ということのような気がする。なんとなく,文脈に流して(相手のせいかも,という余韻を残す狡さがある),その場を切り抜けるような方便ではないか,という気がしないでもない。

言葉は,その人の姿勢を示す,もう少し,はっきり言うと,

生き方を示す,

曖昧で玉虫色の言い回しで切り抜ける,というのは,そういう生き方をしていく,と言っている,というか言わず語りに現れてしまっているようで,ちょっと気色悪い。

自分が,

というIメッセージというのは,

自分の責任で発する,という意味があるはずで,

主語を明確にするのと同様,

意味の明晰,明瞭な言い方をすべきなのだ,とつくづく思う。自省,自戒を込めて。

参考文献;
北山修『意味としての心』(みすず書房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)




今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

【関連する記事】
posted by Toshi at 05:27| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください