2014年07月12日

ご免


天下御免の向う傷,

と言ってピンとくる人は,ほぼ同年代といっていい。しかし,この場合の,

御免



ごめんなさいの

ご免

が同義とは到底信じがたい。語源的には,

御+免

で,

免ずる(免許,免職)の尊敬語

とある。「お許しを」の尊敬語となる。しかし,語義は,

①免許の尊敬語。お上のおゆるし。「天下御免」はそれ。
②免官・免職の尊敬語。お役御免。
③容赦・朱免の尊敬語。転じて,謝罪(ごめんなさい),訪問(ごめんください),辞去(ごめん蒙る)
④希望しないこと,嫌なこと。何々は御免だ。

と微妙に違う。

思うに,本来は,対手に対して,

許可

をもらうということであったはずが,その尊敬語としてのニュアンスが,立場の上下関係に転じて,というか,あるいは,へりくだって,

お許しをいただけますか

と言うニュアンスに転じたといっていい。

だから,本来は,

免じていただけますか,

という風韻,というか味わいだったような気がする。

それが,文脈によって,

お尋ねしたいのですが,お許しいただけますか

が玄関口や店先での,

ご免ください

であり,

ここで失礼したいのですが,お許しいただけますか,

が,辞去や退席の,

御免蒙ります(ごめんなすって)

となり,

それだけはご勘弁いただきたい,

が,

御免蒙る,

となった。もともとどんな言葉も,文脈依存だから,英語はよくわからないが,

God bless you!

もそういう転調の一種だろうが,日本語は,とくに文脈に依存して,

左様なる次第ですので,ここでお別れします,



さようなら,

になり,

ここで,

になり,

じゃあ,

になり,

では,

になる。そこにる人にのみに,「じゃあ」のニュアンスは伝わる。そこには,その場にいる人同士の,互いの関係性の

ぬくもり,

というのがあるはずだからである。

その意味では,丁寧語と言うのは,

文脈によっては,場違いと言うか,場の雰囲気を壊すこともある。

その意味では,

ご免なさい,

よりは,

ご免,

の方がいいし,

悪い,

のほうがもっといいこともある。あるいは,

ご免あそばせ,

の方がいい場合もある…か?

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)




今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 03:58| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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