面倒


最近,何事もめんどくさがるようになった。えっ,面倒って?ということで調べると,

語源的には,四説ある。

①目+ドウナ(だるい)の変化。見るのも大儀な,の意。
②メドウ(目遠)の撥音便化で,見にくいの意。
③見たくもないの意の「面伏せ」を漢字に訳し,「面倒」として音読した。
④目+ダウ(無益)で,見るのも無駄の意。

どうもこれといって確定していないようだが,見苦しい,くどくてうるさいの意,から転じて,するのが煩わしい,厄介,世話がかかるの意味になったようだ。

面倒臭い,

は,口語的表現。

めんどくさい,

とも略される。億劫,大儀も同義だが,

億劫

は,中国語では,「億劫(おっこう)」=長い時間の意味。仏教用語。

「劫」は,サンスクリット語の音写で,古代インドで,最長の時間単位。「一劫」の長さは,百年に一度天女が高い岩山に舞い降りて頂上を撫で,その摩擦で岩山が消滅するまでの時間,だという。

その一劫の一億倍が,億劫。

きわめて長い時間。まあ,永遠と言ってもいい。そこから,長い時間がかかってやりきれない,から転じて,

おっくう

となった。

大儀は,

重大な儀式

からきて,転じて,

費用が多くかかる,
骨が折れて厄介だ,
面倒で億劫だ,

と意味が変化した,とされる。そこから転じて,

他人の労をねぎらうときに用い,ご苦労,

の意でも使う。

意味を丸めれば,確かに同義になるが,どうも,ちょっと違う。

面倒,

というのは,何しろ,煩を厭う,というか,手間を取ったり,手数を掛けるのを厭う,意味に見える。しかし,

億劫,

というのは,それをするために取られる時間の長さが予想されて,気が乗らない,という感じに見える。で,

大儀,

は,儀が,手本とか,規準とか作法の意味だから,とかく形式ばるというか格式ばって,大仰で,大袈裟で,気が重い,というニュアンスに見える。

だから,

めんどうがる,

のは,ただの怠けに聞こえ,

おっくうがる,

のは,手間を考えて,気が乗らなさに見え,

たいぎがる,

のは,辟易する感じに聞こえる。

元の意味は微妙に違ったのだろうが,日々使ううちに,違いの棘が,すり減って,違いを丸めていく,そういうものなのだろう。

しかし,歳と共に面倒になるのは,

生きること自体

が厄介で大変になるからに違いない。

よっこらしょ,

どっこいしょ,

といわないと,いちいち体が言うことをきかない。これは,いわゆる,

面倒

というのとはちょっと違うのかもしれない。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)


今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

この記事へのコメント