2014年07月24日
仕事
士
という字を調べていて,
侍ろう
から来ており,その連用形,
サブラヒ→サムライ
と音韻変化した,という。高位の人,目上の人の,側近くに仕える人を言う。後,北面の武士ではないが,
武士
を指すようになった,という。つまりは,ただ役割を指しているにすぎない。
士
は,成人男子を指すが,周代だと,
諸侯―大夫―士
の三層に分かれたし,春秋・戦国時代以降は,
広く,学問や知識によって,身を立てる人
を指す。論語で言う,
士は以て弘毅ならざるべからず。任重くして道遠し。仁以て己が任となす。亦重からずや。死して後己む。亦遠からずや
という,あの士である。
この士の字を,中国語源では,
仕事をする場所の目印
とある。つまり,
一(目印)+|(杭)+一(地面)
と分解できるという。そして,事は,
旗を立てる,立つ
と同系,仕とも同系とある。
では,ついでに,
侍という字は,というと,
貴人のそばで仕事をする人,またその仕事
で,
人+寺(仕事)
と分解できる。ついでに,仕事の「事」はどうかというと,
つかえる,
という意味だが,この字は,
計算に用いる竹のくじ+手
で,役人が,竹棒を筒の中に立てるさまを示し,
そこから転じて,所定の仕事や役目の意になったという。
では,「仕」は,というと,同じく,
つかえる
という意味だが,
真っ直ぐに立つ男(身分の高い人の側にまっすぐ立つ侍従)のこと,
という。
事君(君につかふ)と仕君(君につかふ)とは同じこと,
とある。
仕事という言葉自体は,語源的には,
シ(為る)+事
で,すること,しなければならないこと,の意。平安期では用例がなく,中世になって初めて現れる言葉らしい。明治期以降,物理用語として訳されて,
物体が外力で移動する
意らしい。
「侍」は結局のところ,始源的には,その立っている位置というか,立場を示しているだけに過ぎず,大事なのは,どういう「事」に仕えるか,ではないか。
事とは,旗である。旗とは,
「旗」の字のつくりの「其」を除いた部分(風になびくハタの意)+其(合図)
の意味という。旗幟鮮明の「旗」である。「はた」には,
旛(旗幅の下に垂れ下がるしるしばた),旂(鈴のある旗),旃(曲り柄の旗),旆(種々の色の帛でつくった旗),旄(毛で造った旗飾り),旌(あざやかな色の鳥の羽をつけた旗印),旐(亀谷蛇を描いた旗),旒(はたあし,旌旗の垂れ下がるもの),旟(隼を描いた旗)。
等々があるが,なぜ「旗」が,ハタの総称かというと,
龍虎を描く大将の立てるもの
だからである。
自分の旗を立てる,あるいは,仕事に旗を立てる,ということについては,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163010.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163049.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163175.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163553.html
等々で何度も書いたが,自分の旗を立てるとは,自分が何を仕事にしているか,あるいは,自分は何をするためにここにいるか,を明示するということに通じる,と改めて感じた次第…とは,我田引水が過ぎたか。
しかし,所詮,士とは,役割にしか過ぎない。大事なのは,
死してのち已む
という志というか,心映えがあるかどうかということなのではないか。それが,
事に当たる
の「事」であり,事は,すなわち,
おのれの旗
である。結局,その旗に,仕えることを,
仕事
という。旗なきを,
労働を
何と言うのだろうか。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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