2014年07月31日


とも

を引くと,



與(与)





等々が出るが,「友」と「朋」以外は,予想外。ただ「與」については,思い当るものがある。『論語』に,

中候を得てこれを与(とも)にせずんば,必ずや狂狷か。狂者は進みて取り,狷者は為さざる所有るなり

とある。中庸の人間を友とすることができないときは,狂者か狷者を友とする。狂者は積極的に行動するし狷者は絶対に妥協しないところがある,という意味だ。「与」を友としている。「与」は,



の字であり,

ともに
とか
あずかる
とか
くみする

という意味をもっているので,想定できなくはないが,語源をみると,



の原字と同系とあり,

噛み合った姿を示す,

とある。



は,さらに四本の手を添えて二人が両手で一緒に者を持ち上げているさまをしめす,

と言い,

かみあわす
とか
力をあわせる

の意を含む,らしい。



は,同列に並ぶ友達。仲間。僚友

とある。どうやら,官人をさして,いる。同僚の意味だ。

燎(かがりび)

の原字。前後左右に連なる意を含む。「僚」は,人を添えた字で,同列に連なる仲間のこと。



は,やはり同列に並んだ仲間の意で,絶倫(仲間をはるかに超えた)。原義は,



は,「あつめるしるし+冊」の会意。短冊の竹札を集めてきちんと整理するさまを指す。紙の発明前に使われていた竹簡で,竹札をつなげていたのに由来するのだろう。そこから,同類のものが,順序良く並ぶの意を含む。で,「倫」は,

きちんと並んだ人間の間がら

の意味になる。



は,ともづれ,の意味。肩を並べる,意味。



は,並んだ脊椎の骨の形を描いた象形文字。で,「侶」は,

同列に並んだ人,つまり,仲間

の意味。



は,共,一緒に物事をする人,の意。



は,八印によって物を両断することを示す。で,「伴」は,

一体を二つにわけたその片方のこと,つまり,相棒

を指す。



は,対等の姿で,肩を並べたともだち,の意味。

数個の貝を貫いて二筋並べたさま

を,象ったもの。同等のものが並んだ意味,になる。ただ,

同門の相弟子

を指し,「友」とは少し違う。



は,会意は,

庇うように曲げた手を組み合わせたもの,

で,手で庇いあうことを指す。

仲良くかばいあう仲間

の意味。同志は,「友」と言うが,「朋」とは言わない。

いずれも,「とも」には違いないが,



とは微妙に違う。

朋有り遠方自り来たる,亦た楽しからず乎

と一般に言うが,貝塚注は,

「遠方」は現代語の遠方ではなく,遠国の意味に取るとしてもこの時代では見慣れぬ用法である。中国近世の学者兪樾(ゆえつ)の説をもとにして,同僚や旧知人たちがうちそろってやってきて,孔子の学園の行事に参列したと解釈する,

として,こう訓んだ。

有朋(とも),遠きより方(なら)び来る,亦楽しからずや

と。しかし,貝塚先生に逆らうようだが,「朋」が,同門の相弟子と解すると,ちょっと無理な気がする。

横井小楠は,講義録のなかで,

朋友なければ学問致しても天より承け得たる明徳をあきらかにすることはできない。有朋自遠方来でいう朋有りとは、学問の味を覚え修行の心盛んなれば,おのれの方より有徳の人と聞かば遠近親疎の別なく親しみて近づいて話し合えば自然と彼方よりも打ち解けて親しむ,これが感応の理というものだ。朋は学者に限る意味ではない。誰でもその長をとって学ぶときは世人皆吾朋友なり。ぼんやり往来するという意味ではない。もう少し広めていえば,当節幕府より米利堅(めりけん)へ遣わされし使節を,米人厚くあしらい,その厚情の深きを考え思うべきだろう。これ感応の理だ。この義を推せば日本に限らず世界中皆我朋友といってもよい。

という説明をしている。途方もない楽天家,小楠らしく,話を広げているが,「朋」は,学友であり,同志の謂いではない。ただ,吉川英治の言う,

我以外皆我師

という意味で言えば,小楠の言うように,

誰でもその長をとって学ぶときは世人皆吾朋友なり

と,朋といっていいのかもしれない。因みに,同志とは,

志を同じくする人,

とある。

志,

とは,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/402717305.html

で書いたが,

・こころざす,ある目標の達成をめざして心を向ける。「心」+さすに由来する訓。志向。
・こころざし。ある目標をめざした望み。またあることを意図した気持ち。大志。立志。

とある。一緒に何かの達成を目指している仲間である。少なくとも,「友」にしろ「朋」にしろ,ここで,

とも

といっているのが,フェイスブックでいう,

友達申請

の友達ではないことだけは確かである。

参考文献;
貝塚茂樹訳注『論語』(中公文庫)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
山崎正董『横井小楠』(明治書院)


今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 04:26| Comment(0) | 友情 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください