2014年09月04日
落とし前
落とし前をつける
というのは,どう考えても,一般人が使う言葉ではない。ヤクザ用語かと思ったが,
元来は香具師の間で使われていた隠語で,露店などで客と折り合いをつけるため,適当なところまで値段を落とすことを意味した
という。そこから転じて,
もめごとなどの仲に立って話をつける意味になり,
さらに転じて,
失敗や無礼などの後始末をする
という意味となった。
しかと
とか
ちくる
とか
ばっくれる
とか
しばく
とか
うざい
と同類らしい。起源はもっと古いが,
やばい
というのも,隠語らしい。その意味は,
危ない
悪事がみつかりそう
身の危険が迫っている
といった不都合な状況を意味する形容詞や感嘆詞として江戸時代から盗人や的屋の間で使われた言葉であるらしい。その後戦後のヤミ市などで一般にも広がったが,80年代に入ると若者の間で,
怪しい
格好悪い
といった意味でも使われるようになるが,これが,否定的な意味から転じて,90年代,
凄い
のめり込みそうなくらい魅力的
といった肯定的な意味に変わる。どういうのだろう,ヤクザが一般社会に,経済ヤクザとして浸透したせいか,一般人が,ヤクザ化したのか,一般人とヤクザの境界線があいまいになり,ほとんどまじりあっていく。
昔は,正統(?)なヤクザは看板を背負っていたが,いまは,それも難しくなった。入り混じり曖昧化し,一般人のほうがヤクザになってきたように見える。
素人と玄人
という言い方があるが,素人と玄人の区別があいまいになったからと言って,素人が玄人に成れるわけではない。
アマチュアとプロフェッショナル
という分け方とはちょっと違うかもしれないが,玄人は,日葡辞典はないらしいので,素人に対して,当てたのではないかと言われる。素人は,
シロ(何にもそまっていない状態)+人
で,
経験の少ない人
未熟な人
を意味する。こちらが先にあって,後に,それに対する当て字としてつくられた,という説がある。
どうも思うのだが,
玄人
は自分を玄人とは言わない気がする。しかし,
プロフェッショナル
は,自分をプロと言う傾向がある。というより,意識して,プロを強調する。その辺りの微妙な心理は,玄人の対象とする領域が,芸妓や娼妓を指す場合はともかく,
技芸
や
相場
の専門家で,とくに技芸は,
伎芸
の字をあてることが多い。そうなると,
歌舞音曲
である。
歌舞は,踊りと舞であるが,音曲(おんぎょく)は,
近代以前において音楽,あるいは音楽を用いた芸能のことを指した
という。「歌舞」「音曲」はは,ともに音楽を伴った芸能全般をさす。まあ,
猿楽,謡曲(謡),勧進能,浄瑠璃,歌舞伎,人形浄瑠璃,狂言,能,義太夫節
等々,伝統芸能を指しているとみていい。そこには,
矜持
が仄見える。いちいちプロなどといわなくても,おのが芸が語っている,と。
こういう寡黙な立ち居振る舞いが好きである。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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