2014年09月20日
いわく
いわくは,いわゆる,
曰く
からきている。
わけ
とか
仔細
とか
事情
という意味である。
いわくつき
とか
いわく因縁
とか
いわく言い難し
という用例になる。
浩然の気を問われて,孟子が
いわく言い難し
と答えたという。言葉では何とも説明しがたい,という意味だが,
曰く
つまり,「言う」から来ているのを思うと,なかなか面白い。しかし,
いわく
は日本語である。語源は,
イハ(言ふの未然形)+ク(名詞化の接尾語)
で,言うことには,の意。それが転じて,理由,事情となった。
(未だ)言わんとした状態のまま,
と考えると,いわく言い難しはよくわかる。言外の意味と言うか,口に出せないという意味から,わけあり,となるのも分からなくはない。
僕の記憶が間違いでなければ,かつては,
子曰く
を,子のたまわく,と訓ませていた。
のたまわく
とは,
ノタマハ(のたまふの未然形)+ク(名詞化)
だという。ちょっと納得しがたい。で,もう少し見ると,
のたもう(宣う)
とある。
ノリ(宣るの連用形)+給ふ
の約まったもの,とある。言う,告げるの尊敬語ということになる。
つまり,もともとは,
曰(エツ)
には,言うの意味しかないのに,日本語で訓むとき,勝手に「のたまわく」と言っていたことになる。
曰
は,口をあけてものを言う,という意味。
口+乚印で,口の中から,言葉が出てくることを示す,
と言う。因みに,
謂う
は,口を丸く開けてものを言う
で,特に,人に対して言うのを指す。あるいは,その人を評するのにも使う。で,何かをめぐってものを言う時に使う。
言う
は,「辛(きれめをつける刃物)+口」で,はっきりと角目を付けて言うことを指す。
云う
は,口ごもって声を出す意。
道う
は,言うと同じのようだが,「言うは実用にして重く,道うは,虚ようにして軽い」と説明にある。ちょっと意味が分からないが,たとえば,
孟子性善を道う。言えば必ず堯・舜を稱す。
と使い分けている。
よく似たのに,
いわれ(謂われ・言われ)
がある。
由来として言われていること,来歴,理由
の意味で,
謂われ因縁(物事の起こった由来)
という使い方もある。語源は,
言は+る(受身)の名詞化
だという。これは,延々と「言われ」てきたこと→由来と考えれば,そのままだ。
参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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