世界
先日,田口恵子2014個展
https://www.facebook.com/events/1460291794244939/?ref_dashboard_filter=upcoming
に伺ってきた。
大学時代,畏敬する先輩に,
世界がない,
と痛撃された記憶がいまもある。それは,独自の
世界
を描き出す,という意味だと受け止めている。それは,別の言い方をすると,
新たなパースペクティブ
を開く,と言ってもいい。そこに,作家独自の世界を描くことで,
物の光景が違って見える,
というか,
異なる側面が図として浮かび出てくる,
というか,
新しい世界の見え方が開かれる,
というか。
僕は,この作品群の中で,田口さんに問われて,速攻で,
「眠らぬ夜」
を指差した。素人のたわごとに過ぎないが,僕は,一番に,
「眠らぬ夜」
を採る。「月下美人」も,月の連作,「満月」「新月」「上弦の月」「下弦の月」もいいし,
「秒秋」
も捨てがたいが,やはり,
「眠らぬ夜」
を採る。それは,冒頭の「世界」と関わる。素人なので,別に正否,巧拙とは別の,単なる好みの問題かもしれないが,そこに,
一つの世界
が自己完結して存在している,という,絵のありようがある気がした。しかし,だからと言って,自己完結は,リアルの世界から閉じた,閉鎖空間ではだめだと思う。あくまで,この世界と,
拮抗
というか,
対峙
というか,
向き合う,
というか,二つの世界が綱引き合うものがなければ,絵は,このリアル世界に対抗できない。その意味で,「眠れぬ夜」には,
世界の奥行
がある気がする。このリアル世界と拮抗するだけの世界の広がりと奥行きが,ある,という気がした。あるいは,二次元の向こうに,多次元の,
ファンタジー
なのか
スリラー
なのか,
怪奇もの
なのか,
はわからないか,世界が控えている,そんな余韻がある。あるいは,
余白
と言ったらいいのか。
絵に描かれていないもの
を向こう側に感じさせる。
その意味でいえば,逆に,このリアル世界を前提にして,見せる絵は,この世界に依存していて,あるいはこの世界の文脈に依拠して,このリアル世界を知らなければ,その絵の意味も奥行も窺えないというのでは,その絵独自の,
自立した世界
を持っていない,という気がする。だから,僕は,
タイトル
を重視する。タイトルは,世界への扉なのである。表札というと,ちょっと違うが,鍵穴なのかもしれない。
無題というのは,作家自身が,自分が見た,自分にだけ見えた世界を名づけ切れていない,と白状しているように,僕には見える。
あるいは,作家自身が,自分の見た,
新しいパースペクティブ
に自信が持てていないように受け取れる,気がしてならない。作家は,人の見えない世界を開いてくれているのだと思う。そこに見せた見え方が,人々に,その後の
世界の見方
の先鞭をつける,ということは多々ある。
そういう意味では,この絵は,一つの世界がその向こうに,作家自身にも,観る側にも,何かを開いている,という予感がした。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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