はしたない


はしたない

は,

端ない

と書く。

「ハ(端・余分)+ナイ(甚)」

で,

・慎みがなく,礼儀にはずれたり品格に欠けたりして見苦しい。みっともない。
・どっちつかずで落ち着かないさま。中途半端である。
・間が悪く,恥ずかしい。ばつが悪い。
・自分に向けられる他人の言動を,不快に感じたり迷惑に思ったりするさま。
・人に対する配慮が欠けるさま。つれない。むごい。
・程度がはなはだしい。ひどい。激しい。

という意味があるらしい。

本来は,数が揃わないこと,中途半端な状態や気持ちを指した。そこから,現在,慎みがなく,礼儀に外れたり品格に欠けたりして見苦しいこと,間が悪いことを意味するようになった。他に,「ハシタ」は「ハシタ(間所)」の転で,「ナイ」は接尾語とする説もある,

という。

どうも,

はしたない,

と言われるのは,

一見美学に見える。よく言われた気がするが,

みっともない
とか
見苦しい
とか
下品
とか
下卑

という意味以上に,何かがある気がする。倫理というか,

生き方

に関わるような気がする。類語で言うと,

安っぽい
とか
ものほしそう

というのが近いのではないか。それは,たぶん,視点を外に置くと,そういう振る舞いが,

みっともない
というか
見苦しく

見えるということになるのではないか。その振る舞い自体を評することばではなく,外聞とか,世間体という観点での評価のように見える。もう少し突っ込むと,例えば,階級とか,階層とか,特定グループの価値基準から見ると,そこから外れたことが,

はしたない,

と評されることになる。武士であれば,

サムライらしく,

ということになる。ネットで見ると,「学校や幼稚園で親の暗黙ルール」というものがあるらしく,たとえば,

「お迎えに生足で行っては行けません。ストッキングか靴下を着用するのがマナー」
「高すぎるヒールもダメ。当然,ミュールは不可。クロックス等の踵の無い靴もダメ」

とか言うそうで,

「私立幼稚園の送迎に自転車をつかったら,『ママチャリなんて,はしたない。チャリ送迎はNGよ』と注意された」

という。そういう意味では,特定集団内のマナーから外れると,

はしたない

と言われる羽目に陥る。しかし,考えたら,それは,

自分がいかに生きるか,

とは関係ないことから,規制されている,ということになる。それが,国レベルまで広がると,

はしたない,

ではなく,

売国奴
とか
反日

と言われることになる。それは,おのれの倫理ではなく,外から生き方を強いる圧力ということになる。

かつて上司に,

君はうちの社風に合わない,

と言われたことがある。自由にふるまうことは,そこでは,

はしたない

ことだったに違いない。ひとがどんな生き方,どんな働き方をするまで規制し始めたら,右向け右で,そんな中で新たな発想は絶対生まれっこない。それは,国の,組織の,衰退の兆しである。

そう言えば,どこぞのトップが,自国の憲法を,

みっともない,

と言ったが,それはどの集団の視点から言ったものやら,しかし世界から見れば,自国の憲法を「みっともない」などと言って憚らないトップこそが,

はしたない,

と言うに違いないのである。





今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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