(日本語で)スピリチュアルというと,どうも,スピリチュアリティ(spirituality,霊性)と同じ意味で,
「霊魂や神などの超自然的存在との見えないつながりを信じる,または感じることに基づく,思想や実践の総称」
という意味に使われがちである。しかし,先日ブリーフセラピー研究会での,平木典子先生の,「平木典子が解説する『鋼鉄のシャツター』」(これについては,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/410724005.html?1418676377
で触れた)に参加していて,こう言われたのである。
「最近,カウンセリングにおいて,スピリチュアリティ(Spirituality)という言葉を導入するようになった」
と。あるいは,強く意識する,というニュアンスだったが,それに強い印象を受けた。それは,そもそもカウンセリングという言葉の発祥にかかわる。カウンセリングという言葉は,パーソンズが,
「Vocational guidance」
のなかで使ったのが嚆矢なのだが,これが従来「職業指導」と訳されてきた。そう訳されてしまうと,そもそもパーソンズが,vocationalという言葉を使った意図が消えてしまうらしいのである。ここには,単に職を見つける,就職ガイダンスではなく,
天職
というニュアンスがあり,
個人と仕事のマッチング
というときに,アセスメントを総合して個人と仕事の適合をはかる場合の「仕事」には,callで言うのと同じ,天職というニュアンスがあり,天職とのマッチングなのである。で,カウンセリングで,スピリチュアルが重視されるようになったのは,スピリチュアリティの,その本来の意味,
「何のために生きているか,を考えようとする頭の働き」(平木典子)
が,カウンセリングにおいても重要だという再認識にある。言い換えれば,生きていることの,
意味,
や
目的,
を考えるということである。生きている意味,あるいは,
何をするためにそこにいるのか,
である。あるいは,価値でも,使命でも,天命でも,役割でもいい。V・E・フランクルは,それを問い続けていた。
人生が何を自分にしてくれるか,ではなく,自分が人生にどう応えるかだ,
といい,人間が実現できる価値は
創造価値,体験価値,態度価値,
だと提唱した。
創造価値とは,人間が行動したり何かを作ったりすることで実現される価値である。仕事をしたり,芸術作品を創作したりすることがこれに当たる。
体験価値とは,人間が何かを体験することで実現される価値である。芸術を鑑賞したり,自然の美しさを体験したり,あるいは人を愛したりすることでこの価値は実現される。
態度価値とは,人間が運命を受け止める態度によって実現される価値である。
フランクルの,『夜と霧』を読むと,最後まで生き残るのは,
自分が生きる意味,
を意識している人々であった。僕は,最初に旧版で読んだとき,それを「クリエイティブであること」と受け止めていたが,あながち的外れではなかった気がしている。フランクルは,
「なぜ生きるかを知っている者は,どのように生きることにも耐えられる」
と,そして必要なのは,
「生きる意味についての問いを百八十度転換することだ。わたしたちが生きていることから何を期待するかではなく,むしろ,ひたすらいきることがわたしたちから何を期待しているかが問題なのだ,」
と。それは,
何をするために自分はいるのか,
何をするために自分は生きているのか,
を意識しているということでもある。それを考えることこそが,
スピリチュアリティ
であるということだ。僕は,それを,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163010.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163175.html
でも書いたが,
旗を立てる,
という言い方をしている。自分の仕事に,自分の人生に,
何をするためにそこにいるのか,
という問い自体を立てる,と言い換えてもいい。
それは,
自分が生きやすければそれでいい,
ではなく,自分ができることが,誰かのためになる,その意味なのに違いない。それが,マズローの言う,自己実現の意味のはずである。それは,
天
であり
天命
である。何度も書いたが,天には,三つの意味があり,一つは,天の与えた使命,
五十にして天命を知る
である。いまひとつは,天寿と言う場合のように,「死生命有」の寿命である。
そして,いまひとつ,
姑(しばら)く是非の心を置け,心虚なれば即ち天を見る(横井小楠)
で言う天は,「天理」だ(もう一つ加えるとすると「天道」か)。
だから,人事を尽くして天命をまつは,神田橋條治流に,
天命を信じて人事を尽くす,
清澤満之は,それを,
天命を安んじて人事尽くす,
と言った。結局そこに行き着く。
参考文献;
ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』(みすず書房)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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