2015年01月11日

粗忽


昔から,粗忽である。軽率と言い換えてもいい。粗忽とは,辞書的には,

①あわただしいこと。あわただしくことを行うこと。
②軽はずみなこと。そそっかしいこと。また,そのさま。軽率。
③不注意なために引き起こしたあやまち。そそう。
④唐突でぶしつけなこと。失礼なこと。また,そのさま。

とある。ここにないが,もうひとつ,早飲み込みというのがある。早合点,である。軽はずみに含まれる,と言えば言えるが,分かったつもりで動いて,結果,その後処理にバタバタする,という奴である。行動自体は同じことになる。

「粗忽」の語源では,

「粗(あらい)+忽(うっかりする)」

で,そそっかしい,というニュアンスが強い。因果をたどると,

あわただしい,

というか,

気持ちがせかせかして落ち着きがない,

というか,まあ,

せっかち

に起因している,というように見える。で,結果として,

軽はずみになったり,

不躾になったり,

ということになる。語感的には,

不注意による過ち,
そういうことの多い性格,

となるが,たぶん,一種のトンネルビジョンに陥っている,ということだ。何か一点に気を取られて,あるいは思い込んで,たとえば,忘れ物でも,なくしものでもいいが,そのことが視野を蓋って,モノが見えなくなり,あわてる,ということになる。

バタバタするのは,

所要時間の見積もりが,実時間より長く見積もっていたか,
実時間の見積もりが,所要時間よりも短く見積もっていたか,

いずれにしても,実時間不足と思い込んでいるか,実時間不足に陥るかの差はあっても,その時点では(時間がないと),焦っていることに変わりはない。

落ち着け,

という声がかかるのは意味があって,トンネルビジョンから,つまり,そういう心理的どつぼから抜け出すには,

距離を置く,

しかなく,それにはまずは,立ち止まるしかない。それが,

時間的にか
空間的にか,

は別にして,距離を置く第一歩だからだ。

落ち着く,

というのは,

「オチ(おさまる)+ツク(安定する)」

で,おさまる,しずまる,という意味になる。それは,

その場に立ち止まる,

まずは,止まって居つく,

というニュアンスがある。そう考えると,粗忽の類語とされる,

そそっかしい,
軽々しい,

はまだしも,

上っ調子,
おっちょこちょい,
軽はずみ,
軽率,

と「粗忽」とは少しニュアンスが違う。ましてや,

軽佻浮薄,
無分別,
盲目的,

とはかなりの隔たりがある。結果として,軽率な振る舞いになるにしても,上っ調子や,おっちょこちょいなのではなく,何かに捉われ,執着してしまう結果の,

不注意な行動,

ということになる。外見は,変らないにしても,内心の葛藤は,かなりの差がある。単に何も考えず,軽はずみに,というよりは,考えているうちに,何かにとらわれ,逆に,執着し,考え込んだ結果のバタバタになる。そのせいか,



には,

うっかりしているまに,
こころがうつろなさま,

というニュアンスがあり,

勿(ブツ)

は,吹き流しがゆらゆらして,はっきりと見えないさまをえがいた象形文字で,

「心+勿」

は,心がそこに存在しないまま,見過ごしていることを,示す。同じく,心ここにあらずでも,どこかに,まだ救いがある,というのは,思い入れが過ぎるか,

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
日本中村明『日本語語感の辞典』(岩波書店)






今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm


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