2015年01月31日
愛嬌
知らずに使っている仏教用語というのの,ランクが出ていて,
1位 愛嬌 47.9%
2位 挨拶 44.5%
3位 アバター 38.4%
4位 安心 34.3%
5位 食堂 32.3%
とあった。半分以下なので,多くは,承知の上と言えるが,意外なのは,
アバター
で,「ネットワーク上の仮想空間でのユーザーの分身」というのは,判っていたが,
サンスクリット語の「アヴァターラ」が語源で,「(神や仏の)化身」
という意味があるそうである。周知のことなのかもしれないが,「化身」を,ネット上の分身に当てた人が偉いというか,どこまでわかっていたのであろうか。
愛嬌は,愛敬とも書く。
「あいきょう」と読むと,
女性や子供などが,にこやかでかわいらしいこと,またこっけいでほほえましいこと
人に好かれるような愛想や世辞。また催しごとや者をル時に沿えるもの。座興。
ひょうきんで,憎めない表情や仕草
「あいぎょう」と読むと,
親愛と尊敬の念をもつこと。人から愛され敬われること。
顔つき・振る舞い・性格などが,優しく愛らしいこと。
となる。語源的には,仏教用語で,
「愛+敬」
で,愛し尊敬する意(仏・菩薩の,優しく情け深く,穏やかな容貌や態度を表現する愛敬相から来ている)。平安時代になって,『源氏物語』や『枕草子』でも,女性の顔や言動に使われるようになった。
あいぎょうづく
あいぎょうおくれたる
といった使い方で,「あいきょう」に転じた。この意のときは,「愛嬌」と書く。
漢字から当たってみると,「愛」は,
いとおしむ(「恋愛」「愛惜」)
とか
めでる(「愛好」)
とか
好きでたまらない
という意味。「愛」は,
「心+夂(足をひきずる)+兂(人が胸を詰まらせてうしろへのけぞったさま)」
を表し,心が切なくつまって足もそぞろに進まないさま,を意味する。
では,「敬」はと言うと,
うやまう
とか
つつしむ
とか
身をひきしめてかしこまる
とか
尊敬の気持ち
という意味。「敬」の「苟」字は,
苟(きょく)は,苟(こう)ではなく,
「羊の角+人+口」
からなる会意文字(既成の象形文字または指事文字を組み合わせること。会意によって作られた漢字)。角に触れて,人がはっと驚いて体をひきしめることを示す。
「苟(引き締める)+攴(動詞の記号)」
で,「はっとかしこまって体をひきしめること」という意味になる。
「嬌」の字は,
なまめかしい
とか
「阿嬌」で愛人や若い女性を親しみを込めて呼ぶ言葉
という意味があり,艶っぽい字らしい。「嬌」の字の「喬」は,
高の字の先端がなよなよと曲がった形で,曲線状にしなる意で,
「女+喬」
で,女がしなやかに体をくねらせる
という意味になる。
こう考えると,「愛敬」は,敬って身を引き締める,謹む,という意味しかない。「愛嬌」の字に後に当てられたのは,まさに当を得ている。
男は度胸女は愛嬌
と言うが,むしろ,
男は愛敬女は愛嬌
なのかもしれない。
参考文献;
http://news.ameba.jp/20150106-559/
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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