2015年02月11日

メタファー



若林奈穂/中西静香展に伺ってきた。

https://www.facebook.com/events/906547656035742/?sid_reminder=6286788946802245632

そこで,メタファーを思った。メタファーは,見立ての一種である。それについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/408700916.html

で書いた。喩えという概念では,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/401399781.html

に書いた。だから,厳密に言えば,メタファーは,隠喩,つまり,言葉表現における,喩え方になる。しかし,ここでは,もう少し広く,アナロジーの意味で使ってみる。隠喩は,ある意味,言語の美,つまり表現の原点である。

もともと,表現とは,

現実を丸める

ことだ。丸め方が,言語で言えば,直喩でも隠喩でも,あるいは絵で言って,糞リアリズムでも,シュールリアリズムでも,それが作家にとっての表現世界であるなら,同等になる。ただ,あえて,ここでメタファーということを言い出したのは,

『トオリミチ』

という作品を前に,作家の方(中西菜穂さん)と話をしていて,

「普段通っている道」

を描いた,と言われたことから感じた。「通り道」ではなく,

「トオリミチ」

と題すること自体が,現実をどう丸めるかの,作家の意匠があるが,その作品自体が,抽象度の高い階段を抽出して描いており,すでに,その段階で,

メタファー度,

を高めている。寓意といいかえても,この場合,同じだろう。

具象を,極端にドアップすると,具象の形が消えて,何かの喩えのようになることがある。その意味で,現実の意味が捨象され,それ自体がどこかの「道」であるのをやめて,ある種の「ミチ」そのものになる,と言い換えてもいい。

この作家のものは,『ラセン』もいいが,もともと「螺旋」というもの自体が抽象度の高いものなので,それより,

『クロス』

がいい。視界を限る,メガネフレームのような枠取りが,意図的らしい。僕は,マッハの,自画像と題された絵を思い出した。。

その絵は,寝椅子に横たわる自分が,自身にどう見えるかを示していて,マッハはこの奇妙なデッサンを,「自己観察による私」と名づけた。鼻の左側に開けた視界に,肩の突端になびく髭,下方にむかって短縮された遠近法で,胴,肢,足と順次つづいていく……。

マッハⅡ.gif


もちろん,そう見えるはずはない。その意味では,視界の狭さのアナロジー,

自分の視野の限界を表現するメタファー

になっている。ある意味,絵は,作家の視界(思考か感覚かの)を通したものだから,僕には,その視界の限界をあえて表現する意図がはかりかねた。

言葉にすることは,それ自体で,現実を丸めることだ,というか,丸めなければ言葉にはならない。太古,クロマニヨン人の描いた壁画も,彼らなりに現実を丸める意識(それがリアルに写そうとしたか,意識的に神格化しようとしたかはどうでもよい)がなければ,絵にはならない。それは,対象(現実)への距離の取り方を身に付けている,ということだ。もともと,距離を取るということは,パースペクティブを決めるということだ。パースペクティブを決めるということは,視角を決めるということに他ならない。この場合,アングルと言い換えても同じことだろう。

展覧会では,もう一人の作家(中西静香さん)の絵も,

「みさき」(という表示だったと思う)

がいい。まあ,最もメタファーが機能している気がした。この作家は,淡い色調,パステルカラーが好みらしいので,もう一人の作家と好対照だが,色そのものが,淡くされることで,現実が丸められるところがあるのだと,改めて,感じ直した。その指向自体に,作家の志向がある。

ただ,思うのは,色でするにしろ,抽象度をあげるにしろ,メタファーの,喩えの元がそこから透けて見えているのは,「何々の」喩えに留まって,作品が,そのリアルの影に引きずられることになる,という気がしている。まあ,あくまで僕の好みに過ぎないが,個人としては,それは,作品としての自立と相反する気がしている。メタファーであるレベルを,いかにして脱するかが,どの分野においても,格闘のすべてなのではないかと思う。

その意味で,メタファーを感じ取らせたのが,正否いずれかは,僕には判別はつかない。

参考文献;
エルンスト・マッハ『感覚の分析』(法大出版局)





今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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posted by Toshi at 05:17| Comment(0) | 展覧会 | 更新情報をチェックする
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