2015年02月16日
下駄をはかせる
下駄をはかせる
ものごとを実際より高くみせる
囲碁で,一間または二間離れて石を打ち,相手の石が逃げられないようにする(「下駄にかける」とも)
といった意味があるらしい。その他,
活字時代,必要な活字がない場合,活字を逆さまにして代わりに入れる習慣があった。活字の底は四角く平らになっており中央を横切るように太い溝が彫ってあるので,それを印刷すると「〓」となり、これが下駄の歯の跡に見えることから「下駄(ゲタ)」と呼ばれた。
という特殊な意味もあるようだ。
成績に下駄をはかせてもらえるほど,覚え目出度い学生ではなかったが,「下駄をはかせる」というのは,
大工用語で,古い柱の根が腐ったりしたとき,新しい木材で根継ぎをする,
というのが,語源らしい。「下駄」自体が,
「下(低い)+タ(足板)」
で,木製の低い足駄(あしだ)の意味らしい。足駄(あしだ)自体がよくわからなくなっているが,
屐とも書き,また屐子 (けいし) ともいう。主として雨天用の高下駄。木製の台部の表に鼻緒をつけ,台部の下には2枚の差歯がある。足下または足板の転訛した呼称といわれる。
とある。これだと区別がつかないが,
①(雨の日などにはく)高い二枚歯のついた下駄。高下駄。
②古くは,木の台に鼻緒をすげた履物の総称。
足駄の方が上位概念らしい。下駄自体は,中世末,戦国時代が始まりらしいが(「下は地面を意味し,駄は履物を意味する。下駄も含めてそれ以前は,『アシダ』と呼称されたという説もある),その中で,近世以降,雨天用の高下駄を指すようになったものらしい。
「下駄をはく」というと,
中間で値段を高くして利をとる
ものごとが終わる,決着がつく(「下駄をはくまでわからない」というような)
と,また意味が少し変わる。
「下駄」自体が,身の丈よりも,高めに見せる,見かけが変る,という印象があるせいなのか,暗に,
実体と乖離している,
というニュアンスがあるようだ。柱を継ぐこと自体が,ちょっと後ろ暗いニュアンスがあるせいだろうか。
下駄を預ける
という使い方もあるが,これは,
すべてを相手を頼んで,処理を一任する,
という意味だが,
(自分に関する問題などに関して)決定権を譲り全面的に相手に任せる(自分では動けなくなることから)
というニュアンスがある。語源的には,
遊郭や芝居小屋で下足番に下駄を預ける,
という意味であり,転じて,
自分の身の振り方を任す,
という意になり,さらに転じて,
自分は動かず,すべて相手または,第三者に処置を任せる,
という意味になったという。
下駄を預けるはともかく,下駄をはかす,の類語というと,
鉛筆を舐める,
とか
さばを読む,
というのが思い浮かぶ。鉛筆を舐める,というのは,
数字を操作してごまかす,
という意味だと思っていたが,こういう説明があった。
「丁寧に考える,慎重に書く,というような意味で使っていました。昔の鉛筆は,今と違って,書いていると文字の色が薄くなってきたのです。ちょうど芯の部分にロウがくっついたような感じで,紙の上で滑ってしまうのです。今でも安物の鉛筆(メモ帳にくっついている小さい鉛筆など)は、この傾向があります。」
と。しかし,一般には,
数字上の行為をほどこすことであり,予算や企画書などの書類作成に際して,数字的にも,ムリがあったり,つじつまが合わなかったりしたときに,適当な加筆訂正をして都合の良い結果を導く,
などと,あまりいい意味では使わない。多く,下駄をはかせるのと同じような,数字操作をする,という意味で使われている気がする。
鯖を読むも,
数をごまかす,
という意味で使われる。語源的には,「鯖読み」として,
「鯖+ヨミ(読む,数える)」
で,鯖を数えるときごまかすことが多かったから,と言われる。鯖は腐りやすい魚なので,売り急ぐことが多く,急いで数えるため,数え間違いの多い魚で,「いい加減に数を数える」ことから,
ごまかして,自分の利をはかる,
都合のいいように数や年齢をごまかす
となったとされる。
いずれにしても,故意に実態を糊塗するという意識で,言うことに違いはない。まあ,
鉛筆を舐めて,下駄をはかせて,鯖を読む,
というところか。これは,そのまま,今日の日本の現状である。実態から目を背けない,ところからしか進歩も前進も成長もないはずなのだが。。。。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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