2015年02月18日

考え落ち


東京国立近代美術館の「高松次郎ミステリーズ」

http://www.momat.go.jp/Honkan/takamatsujiro/

お邪魔した。興味を引かれる部分は少なくないが,観終わっての感想は,

考えおち

という印象である。いわゆる,落語の落ちの一つで,

よく考えないとその意味やおかしみがわからない落ち,
パッと聞いたところではよく分からないがその後よく考えると笑えてくるもの,

というのが考え落ちだが,なかには,あきらかに,

滑っている,

ものもある。そこが面白い。なぜなら,アイデアメモも一緒に展示されていたが,彼自身が,とことん考え詰めた結果だからだ。アイデアを考えるとき,よく言う冗談に,自転車の改良,改善を考えていて,

ペダルをこぐことが負担で,自転車にギアをつけ,
もっとこぐ負担を軽くしたいと,補助動力をつけ,
いやいやこぐこと自体が邪魔くさい,となってエンジンをつけ,

となっていくような可笑しさが,

点→線→形→平面上の空間…

という,彼の思考の(というか画業のテーマの)流れにある。最後,それって,絵画じゃん,と突っ込みたくなる。

考えれば,有名な遠近法を具体的な形に造形したテーブルと椅子のセットにしても,

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わざわざ,人間の視覚がつかまえる奥行を,絵で二次元で表現するときに,遠近法で描くが,それをそのまま立体に造形し直した。だから,造形されたものは,実際に奥行ほど小さく短く切られて造られている(だからそれを写真で見ると二次元そのものに写る),というプロセスを,メモノートとセットで展示することで,

考え落ちの

絵解きをして見せているようなものだ。しかし,むしろ,絵解きされることで,二次元表現を三次元に造形し直すということ(逆に言うと,「平面上の空間」ということが,三次元を二次元に置き返すという,ただの絵にしかならないこと)の可笑しみが,ネタバレした落ち,見え見えの落ちの解説を聞かされるような,ちょっと引いた気分になる。これは,時代の差なのかもしれない。

しかし,点を着想し,

点の奥行

と言語化し,それを造形化しようとする発想は,いかにも考えて考えた,

(抽象的な)概念をどう造形化(具象化)するか,

という試みに見え,僕には,斬新であった。自分の頭の中で練りに練った,抽象的な概念を,形にして,

顕現させる,

という,高松次郎の造形美術の制作プロセスそのものを,メモと途中のラフスケッチと完成像を並べることで,絵解きして見せてくれる場になっている。

いかにも頭で考える造形美術家というのが,よく見えて,そのプロセスは興味深かった。たとえば,点の奥行から,線へと移るときだと思うが,

「影(不在発生装置)」

というラフスケッチがある。そこに,点,点の奥行,線が描き出されている,この抽象概念を絵にしようとする,まあ,悪戦苦闘ぶりそのものが,高松次郎という作品群の象徴に見える。

消失点
だの
半実在化
だの
二つの消失点
だの
影の圧縮
だの
遠近法
だの

を造形しようとするチャレンジのプロセスが,とてつもなく前衛的で,魅力がある。だから,今見ても色あせていない。しかし(というか,だからこそというか)いつも,成功しているとは限らず,

滑った考え落ち

なのも,頭で考える造形家らしい。

有心と無心,意識と無意識,策と無策,…の弁証法的統合

とメモ魔にあった。頭でっかち(失礼!)というか,考え過ぎて,それに造形がおっつかない様子が,メモからよく見える。やはり,



がいい。工藤栄一の『服部半蔵 影の軍団』に出演していたを緒形拳が,影を効果的につかうとこうなるのか,と感嘆したと記憶しているが,影は,本体があるから影があるように感じられているが,僕はそうではないと思っている。影があるから,本体が存在していることが分かる。幽体は,影が映らない。有名な,『影』という作品もいいが,

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光を使って見せる,陰翳のマジックが面白い。実際にそれを試せる。

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自分を被写体にしてみることで,影を試すことができる。もし,二つの光源からふたつの影がうまれる,というところを,光源はあるのに影が写らなければ,かえって面白いのでは,と感じた。

DSC_0341 - コピー.jpg


あるいは,写った影が,本体と関係なく勝手に動く,ということも,発想としてはある。いまなら,そんなことは技術的には簡単にできそうだ。






今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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posted by Toshi at 05:00| Comment(0) | カテゴリ無し | 更新情報をチェックする
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