2015年02月25日
いなせ
「いなせ」は,
鯔背
と書くらしい。語源は,江戸日本橋の魚市場の若者が,
鯔(イナ ボラの幼魚)の背のような髷を結ったから,
という。威勢のいいこと,粋で,勇み肌なこと,またそういう気風を指す。その髷を,
鯔背銀杏,
というらしい。因みに,「粋(粹)」は,
心意気の略
である。その意味は,
気持ちや身なりのさっぱりして垢抜けしていて,しかも色気をもっていること,
あるいは,
人情の機微に通じ,特に遊里や遊興に精通していること,
ということらしい。しかし,漢字の,「粋」の字は,
小粒できれいにそろったさま,
の意で,
「米+卒(卆)」の「卒」は,
「衣+十」で,ぱっぴのような上着を着た十人ごと一隊になって引率される雑兵や小者を表す。小さい者が揃いの姿をしたの意らしいから,小さい者という意。で,「米+卒」で,
小さいコメがそろっていて混じりけのないこと,
ということになる。類語に「伊達」というのがある。語源は,
ひとつは,「取り立てる」の「タテ」で,目立つという意味。実際以上に誇示する。
いまひとつは,「タテダテシイ」の「ダテ」で,意地っ張りという意味だ。伊達の薄着,というように,言ってみると依怙地を張っている,というニュアンスである。だから,
ことさら侠気を示そうとすること,
とか
派手にふるまうこと,
とか
人目につくこと,
とあって,そこから,
あか抜けていきであること
とか
さばけていること
となっていく。しかし,どこかに,「見栄をはる」とか「外見を飾る」というニュアンスが抜けない。
似たものに,「伝法」というのもある。「伝法な」は,
浅草伝法院の下男が,寺の威光を借りて,悪ずれした荒っぽい男であったのが,「デンポウ」な,の由来,
とされる。転じて,無法な人,勇み肌という意になっていく。「鉄火肌」というのもその流れだろう。「鉄火」というのは,鉄火場,つまり博奕場である。しかし,「鉄火肌」の「鉄火」は,
鉄火(鉄が焼かれて火のようになったもの)
という意味から来ているので,気性の激しさを言っている。
どうも,いきがっている本人ほど,周囲は,認めていず,だからいっそう伊達風を張る。その辺りの瘦せ我慢というか,依怙地さは,嫌いではないが,所詮,
堅気ではない,
のである。まっとうな,素人ではなく,その筋の,玄人なのである。それは,額に汗して働く人の上前を撥ねる連中である。だから,
いき
とか
いなせ
を気取る人間が嫌いである。どうやら,そういう男伊達というか侠気というのは,
戦国武将の気風の成れの果て,
らしく,そのことは,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163232.html
で,「サムライ」と「ヤクザ」について触れた。いずれも,
無職渡世,
と相場は決まっている。つまりは,寄生虫である。いくら粋がっても,嫌われ者なのである。だから,余計に粋がる。
いなせやいきは,気骨とは違う。気骨については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/404572114.html
で書いた。粋がるのではなく,気骨,
「気(気概ある)+骨(人柄)」
こそが,サムライである。
容易に人に従わない意気,自負,
こそが,粋である。それは,心映えだから,見栄を張って,外に着飾るものでも,言い募るものでもないのである。心映えについては,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163582.html
で書いた。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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