2015年03月14日

かたなし


かたなしは,

伊達男もかたなしだね,

等々とつかう。しかし,かたなしは,同じ,

形無し

と当てても,

跡かたがないこと,形跡が残っていないこと
さんざんなこと,面目を失うこと
形無し銭(文字がつぶれた見えないようになった銭)の略

というほかに,形容詞としての使い方があり,

容貌が醜い,汚い
形跡が残っていない

という使い方があり,『古語辞典』にあるのは,前者の使い方例だ(記憶では,前者の使い方に「陋無し」を当てていた例がある。「陋)は狭いとか粗末という意味。乚+丙は,足さえ左右に開けない狭さの意。阝は,「阜」で,土盛り)。

語源をみると,

形無しは,

「カタ(形)+無し」

で,みじめな様子,本来の姿が損なわれてすっかりだめになること,という意味らしい。

この辺りは,原意は,

何かの調子に本来の形を損なったさま,

だったのだろう。それに毀誉褒貶の価値観がはいると,

面目を失う,

になり,美醜の価値感がはいると,

みっともない,
みにくい,

となる,というような。

漢字の「形」という字は,

左側は,もともと井(ケイ)で,四角いかたを示す象形文字。「彡」は,指事文字。

飾りや模様を表す記号として,彩・影・形等々の字に使われている。で,「形」は,

「井+彡」で,いろいろな模様をなす枠取りや型のこと。

異説に,「幵(そろえる,たいら)+彡(刷毛で刷く)」というのがあり,その場合,

美しい線で象られたものの形態,

となる。「型」の字は,「刑+土」で,

刑は,「井(四角い枠)+刂」で,小刀で枠の形を刻む意を持つ。「刂」は,刀で,そう言えば,「創」の字は,

鋳造するとき,できた後,刀で鋳型に切れ目を入れる

意だと,どこかで聴いた記憶がある。左側は,「形」と同じで,井の変形。「耕」の「井」と同じで,畑に枠の筋目を入れる=たがやす意味。「刑+土」は,

砂や粘土で作った鋳型のこと,

という。その「型」からきているのか,日本語の「かた」は,

カタ(堅・固)

で,土を固めて乾かし,カタを取ったのが,語源。だから,

カタ
カタチ
カタメル
イガタ

のカタも同源。平面的なカタより,立体的なカタのことを指すらしい。となると,わかりやすい。そのかたちが崩れていれば,形無しである。

こう見ると,どちらにしろ,きちんとカタのあるもの,形の整った姿勢,振る舞い,評判の人が,そのカタチを崩し,見る影もなく,尾羽打ち枯らす状態を指す。

「尾羽打ち枯らす」という言い方は,鷹の,尾羽が損じてみすぼらしくなること,を指しているから,烏や雀には使えないのと同様,「かたなし」も,もともと形のない人には使えない,ということになる。。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)








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http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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posted by Toshi at 05:33| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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