2015年04月15日

仕出し


仕出しには,

(工夫して)創り出すこと,工夫・趣向を凝らすこと。またそのもの。新案。流行。
装い。いでたち。おしゃれ。
注文に応じて料理を作って配達すること。出前。
財産を作り上げること。また、その人。
演劇・映画で,本筋に関係なく,ちょっと現れるだけの端役。通行人や群衆など,場面の雰囲気を作るような役。
建物などで,縁側のように外側に突き出して構えた部分。

等々の意味がある。語源をしらべても,

作り出す,

で,注文に応じて,料理を作って出す意とあり,

芝居用語では,

「し始める」

という意で,通行人など,ごく軽い役をさしている,とある。古語辞典を拾うと,

シイダシ。

の略とあり,

ものごとを新しく作り出す,また,やってのける,

というのが初めに載る。つづいて,仕立てる,初めてする,新工夫,と続く。後は,いわゆる国語辞典と同じだ。

本来は,

しいだす,

だったのだろう。そこには,

なしはじめる,
新しく作り出す,
準備する,
料理などを調えて届ける,
やってのける,
かせぎだす,

等々の意味が続くが,本来は,古語辞典にある,

しいだし,

で,「為出し」と当てる。これだと,

つくりだす,
しはじめる,
事をやってのける,

という意味になる。芝居用語で,「仕出し」を,

し始める,

としているのは本来の使い方を残しているのかもしれない。通行人とか,何となく人が通るとか,で芝居の場面が設えられて,ストーリーが始まるからであろうか。そこから,端役をさすようになった,というのは,何となくわかる気がする。

一般に言えば,エキストラであり,通行人,群集など物語で重要性の少ない役を演じる出演者だが,その人がいなければ,町の雰囲気は出ない。人がいて,町という場面になる。。日本の映画業界では、「仕出し」,古くは「ワンサ」とも言ったらしいが,「わんさ」とは言い得て妙。音楽の分野では、楽団などの演奏に正メンバーなどの代理として臨時出演することを言うらしい。

いまは,仕出しというと,仕出し弁当のような,出前の意味だが,仕出し弁当は,天和・貞享(1681~88)の元禄直前頃始まったとある。出前と似ているようだが,少し違う。感覚としては,店屋物は,出前という印象だが,仕出しというと,祝い事や法事などに用いる和食の弁当や寿司などと,ちょっと印象が違う。その印象を強めているのが,予約の有無だ。出前というと,予約が要らない感じである,というのである。

そば,うどん,などの,いわゆる出前は江戸時代から存在したと言われるが,出前という言葉自体は,明治頃まで遊女の年季勤めが終わり,遊里を出る前をさす意味にしか使われなかった,という。

出前は,出(店の外へ出る)+前(本来敬称,客)で,

「前」は「一人前」「分け前」など「それに相当する分量」「分」を表す接尾語。「前」で,出向いて注文された分を届ける意味,

と,

敬意を持っていう時の「お前(御前)」の「前」で,出向いて御前のところに届けるといった意味,

との二つの説があるようだ(http://gogen-allguide.com/te/demae.html)。

しかし,仕出しという言葉から考えると,前にも書いたが,「仕」は,「人+士」で,

「士」は,男の陰茎の直立するさまを描いた象形文字で,男,直立の二つの意味を含む,

という。それに「人」をプラスして,

真直ぐに立つ男(身分の高い人のそばに真直ぐに立つ侍従)のこと,

と言い,「事(じ)」に通じ,仕君(君につかふ)と同じこと,

とある。「為出す」を「仕出す」に当てたとき,そこに,「仕」,つまり,つかえる,というニュアンスが込められたのではないか,と想像する。だから,仕出しは,いまで言う出前のように,普通庶民が簡単に取るものではなかったのではないか。

時代劇でよく見るように,ついこの間まで,豆腐ややシジミ・野菜のように,売って廻っているのがあったし,落語などでもあるように,そば・すし・天ぷらなども,屋台(といっても天秤棒を担い)売り歩いていた。

一般庶民は出前など取らない。大店の主人,家族,大名などに限られていたと考えていい。

となれば,「(料理を)出す」のを「仕(つかまつ)る」としたことに意味があるのかもしれない。ただ,「為(す)」の連用形「し」に,「仕」を当てて用いる例は,

仕事
仕儀

等々あり,そこでも,「つかえる」「役目につく」という意味が込められていたようであるから,「仕」のもつニュアンスが生かされているような気がする。

参考文献;
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)







今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

posted by Toshi at 04:55| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください