2015年05月07日
たちまち
「たちまち」は,
忽ち
と当てるが,辞書(『広辞苑』)には,
一説に,原義は「立ち待ち」,立って待っているうちにの意,
と,注記し,
にわか,
急に,
すぐ,
という意味を並べる。別の辞書(『大辞林』)は,やはり,
「立ち待ち」の意からか,
と,断って,
非常に短い時間のうちに動作が行われるさま。すぐ。即刻。
思いがけなく、ある事態が発生するさま。にわかに。急に。
(多く「たちまちに」の形で)現に。確かに。まさに。
という意味を並べる。古語辞典では,
「立ち待ち」の意。立ったままで事の成るのを待つ意から,ごく短い時間を表す,
とある。語源的にも,
「立ち+待ち」
で,立ったまま待つうちに,その姿勢で待つうちに,
の意味とする。じつは,この「たちまち」に行き着いたのは,
月の名前,
を調べていて,
満月が十五夜(望月)で,
十六夜の月が,不知夜月(いざよいづき),
十七夜の月が,立待月(たちまちづき),
十八夜の月が,居待月(いまちづき),
十九夜の月が,寝待月(ねまちづき),
二十夜の月が,更待月(ふけまちづき),
と,だんだん月の出が遅くなり,立って待っているうちに,次に坐り,いずれにしても横になって待たないとならないくらい月の出は遅くなり,ついには,夜更けに昇る,という次第。
立ち待ちは,
立ったまま待つ,
あるいは,
其のときになるまで眠らずにいる(『大言海』)
という意味だが,
立待月,
の略でもある。「立待月」は,
「立ち+待ち+月」
で,立って待っているとほどなく出てくる月,を指す。
なんとなく,「立待月」から,「たちまち」が出たと思いたいが,そもそも,
観月,
つまり月見の慣習は,中国に由来する。とすると,それの前後,
十三夜の十三夜月(じゅうさんやづき),
十四夜の小望月(こもちづき),
から,二十日まで,こまかく指折り数えていくのは,日本的だ。「立ち待ち」をそれに当てただけだろう。まあ,
立って待っている間に出る,
という,時間間隔なのだろう。現代人の感覚だと,だんだん,満月に向かって,月の出が遅くなり,立ち待ちどころか,イライラしてしまうが,その待つ間を楽しむ,という感覚だったに違いない。
因みに,「忽」の字の「勿」(ブツ)は,
吹き流しがゆらゆらとして,はっきり見えないさま,
を描いた象形文字。「忽」は,「心」を加えて,
心がそこに存在せず,はっきりしないまま見過ごしていること,
という。これだと,「たちまち」というより「うっかり」「ぼんやり」の気がするが,意味を見ると,
いつの間にか,
うっかりしている間に,
という意味。つまりは,一瞬気がそれ,ぼっとして,また元へ戻ってきた感じであろうか。我に返ってみれば,
ほんののつかの間,
である。裏返せば,
たちまち,
か。
乱は忽ちにする所より生ず,
という。主観的には,たちまちだが,うっかり,ぼんやりは,放心の時間である。「忽」(こつ)はまた,単位でもある。
10-5(10万分の1),糸の1/10,微の10倍に当たる,
微(わずか)の十倍である。因みに,須臾は,
10-15(1000兆分の1)
だそうだ。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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