2015年05月13日
朝っぱら
いつぞや,朝っぱらから,
ABE IS SLEEPING
の,のどかな映像を見せられて,
むかっ腹
が立った(それについては,http://ppnetwork.seesaa.net/article/416592147.htmlで書いた)が,この,
朝っぱら,の「ぱら」は,
腹
だと言う。つまり,「朝っぱら」は,
「朝+腹」の促音化
で,朝食前の空腹状態が語源で,促音は,朝を強めた言い方になる,という。しかし,
むかっ腹
は,腹には関係なく,
ムカマカ(擬態語)+パラ(腹が立つ)
で,
わけもなく腹が立つこと,
という説明になっている(『日本語源辞典』)が,いまいちしっくりしない。別に調べると(『広辞苑),
ムラバラの促音化,
とある。で,「むかばら(向腹)」を調べると,
むかむかと腹を立てる,
とある。だから,「朝っぱら」も,
朝腹,
で調べると(『古語辞典』),
(促音が入って,アサッパラともなる)
とあり,
朝食前のお腹,
という意味と,
極めてたやすいこと,
朝飯前,
の意味が載っている。ついでに,「朝飯前」を調べると(『大言海』),
朝起きてより,朝食を食う前,
僅かなる間隙(ひま)に言い,たやすきことに言う,
とある。どうやら,朝飯の前というのは,
腹の減った時間,
という意味と,
(食べるまでの)僅かな時間,
という意味とがあり,まあ,そのぐらい簡単にできる,というニュアンスがある。その意味では,その時間は,お腹のすいた,余り機嫌のよくない,エネルギーのない時間,という意味もあるかもしれない。
因みに,「はら(腹)」は,
ハラ(張る)の変化,
という説がある。人の盛り上がった部分で,飲食したり,胎児を宿したりしてハル(張る)ところ,という意味である。いまひとつは,
「ハラ(原)」
が語源で,人体の中で,広がって広いところという意味である。そうなると,「原」を調べないわけにはいかない(『日本語源辞典』)。これにも二説あって,
「ハラ(ハリ,開・墾・治・拓の音韻変化)が語源で,開墾して広がった地,
と,いまひとつは,
「ヒロ(広),ヒラ(平)」が語源で,ハルバル(遥々)やハラ(腹)と同源。広がった広い平地,
という意味になる。
念のため,「腹」の字を調べる(『漢字源』)と,右側は,「ふくれた器+夂(あし)」で,
「重複したふくれることを示す」
とあり,往復の「復」の原字,という。それに,「肉」を加えた,「腹」は,
腸が幾重にも重なってふくれた腹,
の意。異説(『日本語源辞典』)では,
「月(肉)+右側のつくり(覆う)」
で,体内部を覆い包むところ,という意味になる。「原」の字は,
「厂(がけ)+泉(いずみ)」
で,岩石の間の丸い穴から,水が涌く泉のこと。源の原字。水源であるから,「もと」の意味を派生するが,広い野原を意味するのは,原隰(げんしゅう),和泉の出る地,の意味から。ま,「原」が,
ひろびろとした,
という意味なら,「朝っぱら」は,
朝腹
よりは,
朝原
の方が,気分爽快で,朝飯前の気になるし,また,「向かっぱら」は,
向腹
よりは,
向原
の方が,なんとなく,とめどなく広がって,腹立ちが,根拠なく,雲散霧消していく感じで,いいのだが。
参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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