2015年05月14日

ほどほど


ほどほどは,

程程,

と当てて,

それぞれの身分。身分相応,

丁度良い程度,適度,

という意味がある(『広辞苑』)。明らかに,後者は,前者に派生した,と思われる。前者は,結構古くから使われた言葉のようである。『古語辞典』をみると,後者の代わりに,

その都度,毎回,

が載っており,その頻度から,ちょうど良い,と言うニュアンスに転じたのではないか,と想像したくなる。『大言海』をみると,

(ほどを重ねたる語)分限に応じてなすこと,それ相応,

とある。で,「ほど(程)」の語源を見ると,

「ホ(含む)+ド(処)」

で,ある含みをもったところ,範囲,程度,

とある。実は,「程」は,『大言海』では,

物事の分限を言う接尾語。ばかり,だけ,

頃に,折に,

しか載っていないが,『広辞苑』や『古語辞典』にはものすごい量の意味がある。因みに,『古語辞典』には,

「奈良時代にはホトと清音。動作が行われているうちに時が経過,推移していくことの,はっきり知られるその時間を言う。道を歩くうちに経過する時間の意から,道のり,距離,さらには奥行,広さなどの空間的な意味にも使われた。平安女流文学では,時間の推移に伴って変化する物事の様子・具合・程度をいい,広く一般的に物事の程度を指すように使われた。中世になると時間の経過を言う意は減少し,時間の全体よりも,時の流れの到達点,時の限度の意に片寄り,時の中の一点を指すとともに,数量や程度の極度に目立つさま,あるいは限度などの意を表した。他方,平安時代には,経過する時間の意から発展して,時間の進展の結果を言うようになり,…ので,…からという原因・理由を示す助詞の用法が生じた。漢文訓読本では,動作や行為の持続する時間を示す『頃』『中』『際』はアヒダと訓んでいる」

と長い注記がある。「程」の字の影響かもしれない。

漢字の「程」の「呈」の下部の字(テイ)は,人間が直立したすねの所を‐印で示した指事文字。「呈」は,それに口を加えて,まっすぐにすねを差し出すこと。一定の長さを持つ短い直線の意を含む。「禾(いね,作物)」を加えた「程」は,禾本科の植物の穂の長さ。一定の長さ→基準→はかる,等々の意となった,とある。

「程」を辞書で引く(『広辞苑』)と,その意味の多様なことに驚かされる。おおまかに,

時間的な度合を示す(おおよその時間の経過,季節)
空間的な度合を示す(ほど遠い,の程を,広さ)
物事の程度や数量などの度合いを示す(程のよい人,見分,当たり,)
例示する意を示す(~されるほどの)

といった使い分けがある。「程」という漢字は,

目盛で測った度合(「程度」「程量」)
一区切りずつになったコース,物事を進めていく上の一定の基準(「過程」)
乗り,一定の決まり(「章程」)
みちのり(「道程」「行程」)
長さの単位(一程は,一分の十分の一)

で,日本語の「ほど」とは,かなりニュアンスが違う。どういうか,

ピンポイント,

ではないが,といって,その,

間(あいだ),

の幅がはっきりしていない,

という意味で,そのゾーンは,かなり曖昧である。しかし,

ほどあい(程度,ちょうどいい程度)
ほどがある(物事には程度がある,度をこすのをたしなめる)

というとき,一定の判断基準がある。だから,

ほどがよい,

は,「洗練されて粋である」という意味になる。その意味では,「ほどほど」は,似たニュアンスの,

そこそこ,
まあまあ,
まずまず,
チョボチョボ,

とは違う。ほどほどは,

そこそこ,

ではなく,いわゆる,

「中庸の徳たるや、それ至れるかな」

という中庸,というのに似ている。「そこそこ」ではないのである。そこそこについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/405919893.html

で書いた。そこで,ほどほどと対比をしたが,ただ真ん中,可もなく不可もない,中程度ではない。だから,「ほどほど」は,

節度,

でもあるし,過不足なし,というのが近いか。しかも,

無理がない,

のでなくてはならない。つまり,ほどほどは,意識しないと,保てないのである。

彼を是とし又此を非とすれば
是非一方に偏す
姑(しばら)く是非の心を置け
心虚なれば即ち天を見る

この感覚である。ある意味,バランス,であるが,その洗練された感覚,という感じである。僕のように,中途半端に尖った人間のよくできる立ち位置ではない。

参考文献;
大野晋・佐竹 昭広・ 前田金五郎編『古語辞典 補訂版』(岩波書店)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)






今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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