ポツダム宣言



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写真は,1945年8月14日、日本のポツダム宣言受諾を発表するトルーマン


先日の党首討論で,共産党の,志位氏は

「過去に日本が行った戦争は、間違ったものという認識はあるか。70年前に日本はポツダム宣言を受け入れた。ポツダム宣言では、日本が行ったのは間違った戦争だったと明確に記している。総理はこの認識を認めないのか」

と聞いたところ,これに対し,安倍首相は,

「ポツダム宣言は、つまびらかに読んではいないが、日本はポツダム宣言を受け入れ、戦争が終結した」

と述べたと,本来なら,騒然となるべき事態である。しかし,幇間マスコミはほぼ沈黙した。

少なくとも,わが国の戦後のスタートラインとなる,つまりは,無条件降伏を促す,連合国の勧告だ。つまり,

1945年7月26日、ドイツのポツダムにおいて、アメリカ・イギリス・中国(のちにソ連も参加)が発した対日共同宣言。日本に降伏を勧告し、戦後の対日処理方針を表明したものだ。

「ポツダム宣言つまびらかに読んでない」

とは,言質を取られたくない逃げかもしれない。しかし,逃げてはいけない。それを脱却する,としているスローガンの,戦後レジュームは,この受入れから始まっているからには,大人(たいじん)なら,真っ向勝負の機会だったのではないか。

それにしても,「「詳らかに読んでいない」と,言い放つことの意味の重大性が,ほんとにわかっていない。この方は,いまさら申上げるのもなんだが,

綸言汗の如し,

という,言葉の重さがわかっていない。言うことが,ちゃらい,というか,口先三寸というか,それにしても,ひどい人が,この大事な時期に一国の舵取りをする,財界も,保守陣営にも,人材が払底したと,思わざるを得ない。

ま,では,その内容は一体どんなものだったのか。改めて,我々もよく「ポツダム宣言」を読む必要がある。ネット上の,

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/potsudam.htm

から,ポツダム宣言条文全訳である。

(1)われわれ、米合衆国大統領、中華民国主席及び英国本国政府首相は、われわれ数億の民を代表して協議し、この戦争終結の機会を日本に与えるものとすることで意見の一致を見た。

(2)米国、英帝国及び中国の陸海空軍は、西方から陸軍及び航空編隊による数層倍の増強を受けて巨大となっており、日本に対して最後の一撃を加える体制が整っている。(poised to strike the final blows)

(3)世界の自由なる人民が立ち上がった力に対するドイツの無益かつ無意味な抵抗の結果は、日本の人民に対しては、極めて明晰な実例として前もって示されている。現在日本に向かって集中しつつある力は、ナチスの抵抗に対して用いられた力、すなわち全ドイツ人民の生活、産業、国土を灰燼に帰せしめるに必要だった力に較べてはかりしれぬほどに大きい。われわれの決意に支えられたわれわれの軍事力を全て用いれば、不可避的かつ完全に日本の軍事力を壊滅させ、そしてそれは不可避的に日本の国土の徹底的な荒廃を招来することになる。

(4)日本帝国を破滅の淵に引きずりこむ非知性的な計略を持ちかつ身勝手な軍国主義的助言者に支配される状態を続けるか、あるいは日本が道理の道に従って歩むのか、その決断の時はもう来ている。

(5)これより以下はわれわれの条件である。条件からの逸脱はないものする。代替条件はないものする。遅延は一切認めないものとする。

(6)日本の人民を欺きかつ誤らせ世界征服に赴かせた、全ての時期における影響勢力及び権威・権力は排除されなければならない。従ってわれわれは、世界から無責任な軍国主義が駆逐されるまでは、平和、安全、正義の新秩序は実現不可能であると主張するものである。

(7)そのような新秩序が確立せらるまで、また日本における好戦勢力が壊滅したと明確に証明できるまで、連合国軍が指定する日本領土内の諸地点は、当初の基本的目的の達成を担保するため、連合国軍がこれを占領するものとする。

(8)カイロ宣言の条項は履行さるべきものとし、日本の主権は本州、北海道、九州、四国及びわれわれの決定する周辺小諸島に限定するものとする。

  因みに,カイロ宣言は,
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/01/002_46/002_46tx.html

(9)日本の軍隊は、完全な武装解除後、平和で生産的な生活を営む機会と共に帰還を許されるものする。

(10)われわれは、日本を人種として奴隷化するつもりもなければ国民として絶滅させるつもりもない。しかし、われわれの捕虜を虐待したものを含めて、すべての戦争犯罪人に対しては断固たる正義を付与するものである。日本政府は、日本の人民の間に民主主義的風潮を強化しあるいは復活するにあたって障害となるものはこれを排除するものとする。言論、宗教、思想の自由及び基本的人権の尊重はこれを確立するものとする。

(11)日本はその産業の維持を許されるものとする。そして経済を持続するものとし、もって戦争賠償の取り立てにあつべきものとする。この目的のため、その支配とは区別する原材料の入手はこれを許される。世界貿易取引関係への日本の事実上の参加はこれを許すものとする。

(12)連合国占領軍は、その目的達成後そして日本人民の自由なる意志に従って、平和的傾向を帯びかつ責任ある政府が樹立されるに置いては、直ちに日本より撤退するものとする。

(13)われわれは日本政府に対し日本軍隊の無条件降伏の宣言を要求し、かつそのような行動が誠意を持ってなされる適切かつ十二分な保証を提出するように要求する。もししからざれば日本は即座にかつ徹底して撃滅される。

国会図書館の,外務省訳は,

http://www.ndl.go.jp/constitution/etc/j06.html

である。

奇妙奇天烈なのは,安倍首相は,

「アメリカが原子爆弾を2発も落として日本に大変な惨状を与えた後、『どうだ』とばかり叩き付けたもの」

と発言していたらしいことだ。

http://www.asahi.com/articles/ASH5P55GFH5PUTFK00G.html

によると,

「自民党幹事長代理だった首相が月刊誌「Voice」2005年7月号の対談で、『ポツダム宣言というのは、米国が原子爆弾を二発も落として日本に大変な惨状を与えた後、『どうだ』とばかり(に)たたきつけたものだ』と語っていた」

という。

事実誤認というか,そのいい加減さに呆れるというか。

ポツダム宣言が発せられたのは、1945年7月26日。

広島は,1945年8月6日,
長崎は,1945年8月9日,

である。いやはや,恐れ入る。拒絶した結果の,警告を無視して「国体の存否」をめぐって逡巡した結果の,原爆投下ではなかったか。

あるいは,磯崎補佐官は,

https://www.youtube.com/watch?v=YXelcxJIIMY&feature=youtu.be

「ポツダム宣言の一字一句正しいかどうかというとなんとも言えない」

と発言。もはや絶句するしかない。

何をいまさら言っているのか。問題の焦点がずれている。いま,宣言の一字一句の成否を言ってどうなるのか。それをも含めて受諾した,のではないかと。もし間違っていたのなら,そのとき拒絶すればよかったのではないか。何というか,(敗戦以降の屈辱を)なかったことにしたいという,子供じみた,まっとうな大人の台詞とは思えない。どこまで劣化したのか。誠に世界へ向かって恥をさらしている。

露外相が,

「日本は大戦の結果に疑義唱える唯一の国」

といったのは,当たり前かもしれない。しかし,宣言は知りません,と言う(に等しい発言をした)ことは,敗戦を受け入れないと言っているに等しい。それは確かに,それをなかったことにして(つまり,戦後レジームを壊して),敗戦前に戻りたいと,巧まずして語っているに等しい。しかし,わからないのは,

その敵国(ドイツに比して,この敵国条項の生きている)わが国が,国連(「英語表記の『United Nations』は第二次世界大戦中の枢軸国に対していた連合国が自陣営を指す言葉として使用していたものが、継続して使用されたものである」)の常任理事国を目指すって,どういうこと?

その前に,何より,

(敗戦の相手方=敵国のはずの)対米従属(関係)そのものはどうなの(これも戦後レジームなのでは)?

そして,

その象徴であるである,地位協定はどうなの?

しかも,

敵国の米軍基地は(向こうさんが,いらなくなって返したもの以外)そのまま残る(ばかりか更に新たに造ろうという)のは,どういうこと?

それにしても,わが国の幇間マスコミに比べて,最近の,海外の風刺画は,なかなか辛辣である。日本からは,こういうジャーナリズム魂は融けてなくなってしまったが。

http://www.nytimes.com/2015/05/04/opinion/heng-us-japan-alliance.html?_r=0

https://pbs.twimg.com/media/CEjvJQMUMAAehTP.jpg:large

http://www.economist.com/news/asia/21651295-japans-media-are-quailing-under-government-pressure-speak-no-evil

http://www.eurekastreet.com.au/article.aspx?aeid=38918#.VV6NxPntmkp







今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm

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