2015年05月31日

ヒト族


チップ・ウォルター『人類進化700万年の物語』を読む。

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ヒト族は,

動物界 Animalia,脊索動物門 Chordata,脊椎動物亜門 Vertebrata,哺乳綱 Mammalia,霊長目 Primates,真猿亜目 Haplorhini,ヒト上科 Hominoidea,ヒト科 Hominidae,ヒト亜科 Homininae,ヒト族 Hominini,

である。その下にさらに続く。

ヒト亜族 Hominina,ヒト属 Homo,

と。

ヒト科は,ヒト亜科(ヒト属、チンパンジー属、ゴリラ属を含む)とオランウータン亜科で構成される。
ヒト亜科は,ヒト族(ヒト属及びチンパンジー属)とゴリラ族からなる。

ヒト族 はヒト亜族、チンパンジー亜族とそれらの絶滅した祖先のみが属するヒト亜科の族である。現生はヒト、チンパンジー、ボノボの三種のみ。

ヒト亜族は,チンパンジー亜族と分かれ,直立二足歩行をする方向へ進化したグループである。

ヒト属は,ヒト亜族のうち,大脳が大きく増大進化したグループ。現代人ホモ・サピエンスと,ホモ・サピエンスにつながる種を含む。約2万数千年前に絶滅したホモ・ネアンデルターレンシスを最後に,ホモ・サピエンス以外の全ての種は既に絶滅している。

因みに,ヒト属 Homoは,

ホモ・ハビリス H. habilis
ホモ・ルドルフエンシス H. rudolfensis
ホモ・エルガステル H. ergaster
ホモ・エレクトス H. erectus
ホモ・エレクトス・エレクトス(ジャワ原人) H. e. erectus
ホモ・エレクトス・ペキネンシス(北京原人)H. e. pekinensis
ホモ・マウリタニクス(ホモ・エレクトス・マウリタニクス)H. mauritanicus
ホモ・エレクトス・ユァンモウエンシス (元謀原人) H. e. yuanmouensis
ホモ・アンテセッサー H. antecessor
ホモ・ハイデルベルゲンシス(ハイデルベルグ人)H. heidelbergensis
ホモ・ローデシエンシス H. rhodesiensis
ホモ・ケプラネンシス H. cepranensis
ホモ・ゲオルギクス(ドマニシ原人)H. georgicus
ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)H. neanderthalensis
ホモ・フローレシエンシス(フローレス人)H. floresiensis
ホモ・サピエンス(ヒト)H. sapiens
ホモ・サピエンス・イダルトゥ(ヘルト人)H. s. idaltu
ホモ・サピエンス・サピエンス(現代人、現生人類)H. s. sapiens

等々過去700万年の間にいたが,現生人類以外,すべて絶滅した。本書『人類進化700万年の物語』は,訳のタイトルだと,のどかな話に見えるが,原題は,

Last Ape Standing

である。サブタイトルは,ずばりとその意図を示している。

The Seven-Million-Year Story of How and Why We Survived

ヒト族が他の人類をどう蹴落としてきたか,という話である。27種類(と現時点ではわかっている)他の人類は滅んでしまったのである。

本書は,ヒト族について,注で,

「ヒト科は,ゴリラやチンパンジーを含むすべての大型類人猿を指すが,ヒト族は特に700万年前,あるいはその近辺で共通のチンパンジーの祖先から分枝した古代人と現代人を表す。この中には全てのホモ属(たとえばホモ・サピエンス,ホモ・エルガステル,ホモ・ルドルフェンシス),アウストラピテクス属(アウストラロピテクス・アフリカヌス,アウストラピテクス・ボイセイ等),パラントロプスやアルディピテクスのような古い人類が含まれている。重要なのは私たちが最後に生き残っているヒト科だということだ。」

と書いている(本書の訳では,ヒト族で統一されているが,改めて考えると,ヒト属を指すのかヒト族を指すのかが,混乱するところがあったが,まあこちらの浅学のせいだろう)。

いまのところ(まだもっと多くが発見される可能性があるが),27種類の人類(というか,この場合,ヒト属か)がいたらしいが,なぜか,他は滅びて,

「人間はたった一種類しかいない。なぜか。」

と,著者は問う。それが本書のテーマである。「1万1000年前に最後のホモ・サピエンス以外のDNA系統を廃れさせた」が,

「進化した全人類の中で,なぜ私たちだけがまだ生き残っているのだろう。」

に応えようとするのが,タイトルになっている。

「科学者は地球上に初めて人類が出現した時期を約700万年前と考える。それは主として,わずかしかないその頃の化石証拠が,今日チンパンジーと共通だった最後の祖先から私たちが分離してきたことを示すことによる。」

それ以降の700万年の物語である。しかし,読み終わって,その問いへの明確な答えは,ない。まあ,考えてみれば,当たり前かもしれない。

サヘラントロプス・チャデンシス,

と名付けられたのが,人類の始原となる化石である。彼(彼女)の頭部が,

「前肢の拳を地面につけて歩くゴリラのように45度の角度で胴体についているのではなくて,私たちのように胴体に沿ってついている」

ことを示唆していてた,として直立歩行をしていたと推測する古人類学者もいるそうだ。いずれにしても,

直立歩行,

という移動手段をとる哺乳類,というか全生物の中でも,

「これが類を見ない移動方法であった」

というか,一風変わった方法である,ということに着目しなくてはならない。少なくとも,

「それが一連の進化の出来事を始動させて,あなたや私の存在が可能になった」

のである。それと同時に,

「脳がますます大きくなってきた」。

チンパンジーの脳が約350ccであるのに対して,草地に住む霊長類の脳は,450~500cc,なぜそうなったか。著者は,飢餓説を紹介している。

「食欲を満たすのが慢性的に困難な場合に,動物の体内では分子レベルで興味深いことが起きてくる。老化速度が遅くなり,十分な食物がある場合と比べて細胞は死ににくくなる。…身体は欠乏を感じると総動員でエネルギーの節約を行なって,最悪の事態に備える。(中略)栄養の極端な欠乏は動物の寿命を延ばすだけでなく,子孫の数が減ることによって進化の競争のもとで種全体が生き残る可能性を高める。…細胞の成長はあらゆるレベルで速度を落とすのだが,そこに…重要で驚くべき例外がある。脳細胞の成長は増大するのだ。(中略)少なくとも,新たな脳細胞の前駆体である視床下部が作り出すニューロトロフィンの場合はそうなっている。そればかりではなく,食料が欠乏すると食欲を増進するグレリンというペプチドが増加する…。グレリンは…シナプスを皮質ニューロンに変形する。…新しいニューロンの活発な成長を補うために体の他の部分は断食によつて乏しい栄養源をやりくりしてそれを脳に送る。言い換えると,体は加齢の速度を遅らせるが,知能は増大させる。」

350万年前,ちょうどあの有名なルーシー(アウストラピテクス・アファレンシス)や同時代の類人猿が,慢性的な食糧不足が脳の成長を加速させていた,ということになる。

直立歩行による移動性,

脳の成長による適応力,

が,生き残りに寄与した。しかし,効率よく二足歩行するためには,

骨盤の構造

を変える必要があり,しかしその代りに細くなった腰によって,産道が細くなり,それが大きくなった脳と頭によって,ますますお産を難しいものにした。その解決が,

テオニー,

である。つまり,未成熟(早産)で生れ出ることである。

「ゴリラの新生児のように肉体的に成熟して世の中ですぐに生きていける状態で生まれるとしたら,子宮の中で九か月ではなく二〇か月すごさなければならない。」

われわれの脳は,大人の23%で生まれ,三年間で三倍になり,二〇歳になるまで発達し続ける。これを,

「脳のルビコン」

と呼ぶそうだ。これを渡ると,

長い幼少期

が必要になる。おおよそ,180~200万年前,ホモ・ルドルフェンシスやホモ・エルガステルがその候補とされている。

「解剖学的現代人」といえるものの出現は,16~20万年前,エチオピア付近に出現した。しかし7万年前の氷河期,

一万人,

にまで減少する。ほぼ絶滅の危機に陥った。五万年後,気候の反転で,一気に地球上のあらゆるところへ移動していく(実は,その前,170万年前にも,アフリカを出ているが,今日では,それは,絶滅したと考えられている)。

ネアンデルタール人は,ホモ・サピエンスと共通の祖・ホモ・ハイデルベルクスから出ているが,現生人類よりはるかに長い,50万年,氷河期にも生き延びて,ヨーロッパに広がっていた。二万五千年前,ホモ・サピエンスとネアンデルタール人は遭遇し,2万数千年前に絶滅する。

なぜネアンデルタール人は絶滅したのか。いくつかの説があるが,最近有力なのは,ヨーロッパ各地で,クロマニヨン人(ヨーロッパにおける化石現生人類)と,長いもので,1000年も共存していた遺跡が見つかっており,DNAの分析から,1~4%のネアンデルタールのDNAが現生人類に含まれており,

「ヨーロッパから東南アジアの島々に至る地域の人類の大部分は部分的にネアンデルタール人」

という。7万人に達することがなかったと言われるネアンデルタール人は,ある意味膨張する現生人類に呑みこまれた,というのが今の有力な見方のようだ。

著者は皮肉交じりでこう書く。

「なにしろ人間は他の霊長類や,その他の動物とさえセックスをすることが知られているのだから。」

と。

参考文献;
チップ・ウォルター『人類進化700万年の物語』(青土社)








今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 05:11| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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