2015年06月01日
はんちく
「はんちく」というのは,東京の方言らしく,
半ちく,
と書く。
中途半端,
という意味で,
何をやらしてもはんちくだね,
とか,
はんちくな仕事して,
という使い方をする。しかし,
http://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%AF%E3%82%93%E3%81%A1%E3%81%8F
(のみにしか出ていないが)によると,意味が転じて,
(転じて)閑散,
という意味にも使い,
「午前中だけで、学校はんちくだから。どっか遊び行こ?!」
「今日は店、はんちくで終(し)めぇだから、祭りでも見て来いよ。」
とある。どうも,この用例を見ると,
半ドン
の意味に見える。因みに,半ドンとは,最近使わなくなったが,
「土曜日など授業や仕事が半日で終わる日のことで『半分ドンタク』の略である(半ドンのドンが、当時、正午の合図に鳴らした大砲の音とする説があるが、明治始めにドンタクという言葉が流行していることを考えると、ドンタクの略が有力である)。1876年(明治9年)、それまでの1と6のつく日を休日(一六どんたく)にする形から、日曜を休日、土曜を半休(半分どんたく)という欧米にあわせる形をとった。翌年には半ドンと略した言い回しが普及。」(『日本語属語辞典』)
とある。「どんたく」とは,オランダ語(zondag zonは太陽,dagは日を意味し英語のsunday同様、ラテン語dies solisの直訳)の転訛で,
日曜日,
転じて
休日,
を意味する。博多どんたくの「どんたく」も同じである。その意味では,「はんちく」を一人前の半分とすると,「半ドン」の意味に転じた謂れもわからなくはない。それにしても,「はんちく」は,どこから来たのだろう。
「はんちく」と似た言い回しに,
なまはんじゃく,
というのがある。
生半尺,
と当てると,中途半端,いい加減,半(なから)半尺,といった意味になる。
生半熟,
と当てると,半熟を強める言い方で,未熟,生半可,を指す。もともと,
半
という言葉自体が,
半(はん)
二分の一を表す語。ある物の半分,
不完全であることを表す接頭辞,
奇数。なお、偶数を表す対義語は丁,
等々といった意味があり,半端とか,半可通とか,半熟といった使い方をする。「ちく」は,何かが訛ったものか,転用だと思うが,勝手な妄想をすると,「ちく」で連想するのは,
チクる,
の「ちく」である。「口(くち)」の倒語だが,半人前,というか,半人口を指しているのではないか,と考えたくなる。あるいは,「半畜」とあてたらどうであろうか。「こんちくしょう」「あんちくしょう」というときの「畜」である。
実は,子供の頃高山に住んでいて,そこの方言に,
はんちくたい
というのがある。もともとは,
歯がゆくていらいらする様を表現したもの,
だったようだが,
いらいらする,
にシフトし,いまでは
腹が立つ,
という意味で使われているようだ。僕の個人の言葉感覚では,歯がゆい,じりじりするというか,やきもきする,といったニュアンスで,悪意の表現ではなかった気がしているが,なにせ,半世紀以上前だから,意味も変わっている。
実は,これは,江戸弁から来ている,と言われているのである。飛騨は天領だから,代官が入れ替わり立ち代わり,江戸の風儀を持ち込んだせいだと推測される。そこで気になるのは,
「はんちく」
と
「はんちくたい」
のつながりである。「はんちく」な奴を見ていて,じりじりするところから,客体の表現から,主体の,はんちくな奴を見ている側の感情表現になった,と考えると,実に,長い年月をかけて,言葉が,生きている,と実感させられるのだが。
参考文献;
http://zokugo-dict.com/26ha/handon.htm
http://gogen-allguide.com/ha/handon.html
http://www23.atwiki.jp/hidagorin/pages/35.html
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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