2015年06月03日
アホ・バカ分布図
アホ・バカ分布図
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9B%E3%83%BB%E3%83%90%E3%82%AB%E5%88%86%E5%B8%83%E5%9B%B3
というのがあるそうである。しかし,似た言葉に,「あほ」のほかに,
たわけ,
をこ(烏滸),
まぬけ,
たわけ,
頓馬,
等々がある。「をこ」については,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/419978918.html?1433187838
で触れたが,この言葉が気になるのは,子供の頃,(中部圏にはちがいないが)どこで覚えたかはっきりしないものの,
ばかの大足,小足のたわけ,ちょうどいい加減がくそだわけ,
という悪口というか罵りというか,「おまえの母ちゃんでべそ」の類である。しかし,地域によっては,
馬鹿の大足,小足のたわけ,
ではなく,
ばかの大足,小足の間抜け,
とも言うらしいのである。地域によっては,そのあと,
「ばかの大足,小足の間抜け,中途半端のろくでなし」
と続けるところもあるらしい。辞書では,「ばかの大足」は,
「大きな足は、ばかのしるしであるということ。大きな足をけなしていう言葉。『間抜けの小足』などと続けることもある。」
とある。ウドの大木,の類か。長く,「馬鹿」は,例の,「鹿を馬」というか,「鹿を指して馬という」という諺,『史記・秦始皇本紀』にある,という,
「秦の始皇帝が死んだ後、悪臣の趙高が自分の権勢を試そうと二世皇帝に鹿を献上し、それを馬だと言って押し通してみた。しかし皆が趙高を恐れていたので、反対を唱えた者はおらず、『鹿です』と言った者は処刑された。『鹿を馬』『馬を鹿』ともいう。」
という故事に拠っているものと思い込んでいたが,どうやら,
馬鹿,
は当て字らしい。「莫迦」とも当てる。
「梵moha=慕何(痴の意)、または梵mahallaka=摩訶羅(無智の意)の転で、僧侶が隠語として用いたことによる。また、『破家』の転義とも」
言われる。この場合,中国語で「破家」を当てるため,平安期の留学生が伝えた,と想定されているらしい。さらに,
「鎌倉時代末期頃から『ばか」の用例があり、室町中期の『文明本説用集』では、「母娘」「馬娘」「破家」に「狼藉之義也」と説明している。雅語形容詞である『はかなし』の語幹が変化したという説もある(金田一春彦ら)故事の『鹿を指して馬と為す』との関連については、『後付け』であり、語源とは直接関係ない。中国語の『馬鹿(マールー)』は『赤鹿(あかしか)』のこと。』
とある。『大言海』は,
「趙高が事は,欺きて侮蔑したる意とはなれ,愚なる意を為さず」
と簡潔である。その他語源として,
「おこ(woko)の関東方言。voko kkko bokko bako bakaの音韻変化」
というのもある。では,「間抜け」は,というと,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/395727101.html
で,「間(ま)」の意味について触れたように,語源は,
「マ(間・芝居や音楽での調子や調子)+抜け」
の,「変な調子の意」から来ている。転じて,他人と歩調が合わずテンポの狂ってしまう人を言う。
「とんま」は,
「のろまの当て字の『鈍馬』を読み誤ったものの変化」
で,頓馬は当て字。
「たわけ(もの)」は,
戯け
と当てるか,
田分け
と当てるかで意味が違う。「戯け」は,古い言葉で,『古事記』にもあり,
淫らな通い婚
を指したらしいが,後代は,ふざけること,馬鹿者,を指す。「田分け」は,
田地を分け与えて分家を出すこと,
という意味で,「たわけ」の語源に関わってくる。一説(渡部昇一)によると,
「封建時代,幾世代にもわたって財産である田地を分けると,その家は衰退する」
というところから,その愚かさを指している,という。こういう「聞いたふうな説」が一番いけない。
「『バカげたことをする』『ふざける』を意味する動詞『戯く(たはく)』の連用形が名詞となった。」
という語源が,まあ,素直ではなかろうか。
さて,そこで,「あほ(う)」である。語源には,
五山の禅僧が阿呆(アータイ)の漢語をアハウと読んだという説
関西方言の「アア,ホウカ」の音韻変化した説,応答が「アア,ホウカ(ケ)」としか言えないことを揶揄している。
始皇帝の阿房宮(項羽に妬かれたが,あきれたほど馬鹿でかく全焼するのに三か月かかった)説。
等々があるようだが,はっきりしていない。ただ,『大言海』は,
元来,あわう,若しくは,あばうなるべし。あわは,狼狽(あわ)つの語幹(狼狽(あわ)を食ふ)あわ坊の約。小狼狽(あわて)を擬人化したる語。とちめんぼう,同趣なり。新竹斎物語に「くだらぬ理窟,あわう口」,続松の葉に「恥を知らぬは,あほう坊」,またあわわの三太郎などもあり,但馬にて,あはあ,駿河にて,あっぱあと云ふ。あわて者は,まぬけ者なり。常に阿房と書くは,秦の始皇帝の阿房宮を,当字にするなり。あほは,約(つづめ)て云ふなり。山椒(さんしょお)をさんしょ,愛相(あいそう)をあいそがつきる。」
と書き,さすがにその見識を示している。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%98%BF%E5%91%86
によると,「阿呆(あほう、あほ)」は,
「日本語で愚かであることを指摘する罵倒語、侮蔑語、俗語。近畿地方を中心とした地域でみられる表現で、関東地方などの『馬鹿』、愛知県などの『タワケ』に相当する。」
とある。そういえば,上記の,
ばかの大足,小足のたわけ,ちょうどいい加減がくそだわけ,
には,「あほう」はでてこないで,たわけが繰り返されている。僕には実感がないが,「あほう」「ばか」には,
「関東圏であほは馬鹿よりも語感が強く、使う相手やタイミングを考慮する必要のある言葉である。逆に関西圏では馬鹿よりも軽く、親しみの意を込めて使われることも多い。」
らしいが,それは(というかどの悪口もそうかもしれないが)両者の文脈次第で,「あほ」も「ばか」も「たほけ」も,愛情表現ということだって,ありうる。
ま,ともかく,考えてみると,僕の記憶している,
「ばかの大足,小足のたわけ,ちょうどいい加減がくそだわけ」
は,少し地域色が強すぎるのかもしれない。
「ばかの大足,小足のあほう,ちょうどいい加減がくそだわけ」
とすると,いくらか,全国網羅したことになる…か?
参考文献;
http://gogen-allguide.com/a/ahou.html
http://zokugo-dict.com/01a/aho.htm
http://gogen-allguide.com/ta/tawakemono.html
http://gogen-allguide.com/ha/baka.html
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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