2015年06月05日

へんてこりん


「へんてこりん」は,「へんてこ」で意味が通じる。

「変梃」とも当てるが,語源に絡んでいて,

「変+梃」で,梃の調子が悪いことから使い出した,

とある。「変なさま,奇妙なものや人」の意で,

へんちき
とも,
へんちくりん
とも,
へんてこりん,

とも言う。では,この「りん」という語尾は何か。「goo辞書」には,

「りん」は口拍子で添えた語,

とある。そういえば,

「ちんちくりん」
とか
「すってんころりん」

とも言う。「ちんちくりん」は,

背の低い人を嘲る語,

着物などの丈の足りない意,

とがある。語源的には,

「狆をもじった語」

だという。「ちんころ」とか言ったりする。本来は,だから,

背の低い愛らしい人,

という意だったようだ。富永一朗の「チンコロ姐ちゃん」は,多分そういう含意だ。しかし,それが転じて,

衣服が身体に比して小さすぎて珍妙,

という意になった。そこに,多少,あざけりのニュアンスがある。似た言葉に,

「つんつるてん」

というのがあるが,この語源は,

「突き+釣る+天」

で,

「足が突き出し,吊るような衣を着た天王を約した語」

なのだ,そうだ。だから,着物の丈の短い様子を言う。

「すってんころり」は,

勢いよく転ぶさま,

で,「すってんころり」ですむところを「ん」を付けた口拍子なのかもしれない。

「すってんてん」という語もあるが,

「ス(素)+天々(頭)」

の意で,頭にけが一本もないこと,から転じて,無一物になる意になった。「天天」は,いわゆる幼児語で,



の意で,「おつむてんてん」と言ったりするところから来ているので,ちょっとと出自が違うようだ。。

似た言い回しで,

「あんぽんたん」

というのもある。語源的には,

「アホンダラを,撥音化して,薬名らしくもじったもの」

という説がある。江戸期の,反魂丹,万金丹をもじって,安本丹,とした語だというから,これは,「丹」に意味がある。これも,「なんたらリン」とは違う。

どうも,語尾に「ん」は,

「この仮名の声は,他の語の下につきて,鼻に触れて発するが如くして出づ。『行燈(あんどん)』『天秤(てんびん)』の如し。他の音の下に加わりて出づることあり。真名の『まんな』となり,ゆゑ(ゆえ)のゆゑんとなるが如し。また他の音を変じて出づることあり。かほばせ(顔)のかんばせとなり,いかに(如何)のいかんとなり,ぬきいず(抽)のぬきんずる(抽んでずる)となるが如し」

と,『大言海』にあるが,「ん」は,拍子をとるのに都合がいいということなのかもしれない。

未然形について,まだ起こらないことを想像して

あらむ,

と言っていたのが,平安中期以降,

あらん,

という表現が生まれた,と言う(~せむと,が,~せんと,となったり,飲まむが飲まん,になった)。「出来ぬ」が「出来ん」になったりというのもある。あるいは,

あるのだけど,



あるんだけど,

と「の」を転じると,語りがくだける,だけではない。たとえば,

「とんでもない」は,

「途(と)でもない」の転,

との説もあるから(「飛んだこと」の否定表現という説もあるが),「ん」が入ると入らないでは,「とんでもなさ」が違うような印象がある。似たのに,

「どん詰まり」

がある。『大言海』は,

「止(とど)の詰まり」の音便化,

としている。一般には,「どん」は接頭語とされ,どん底,どんぴしゃり,どん尻,の「どん」で,「ど」を強めている,という説が一般的のようで,「ど」は,関西弁の「ドあほ」の「ど」で,それを強調したものとされている。いずれにしても,「ん」は,強める意味がある。

ただ,「ん」は,転じる前の,「ぬ」「む」「の」とは違い,「ん」を挟んで,ただ鼻に抜けるだけで,テンポが変る。だから,

Un

ではなく,

鼻音化

されていないと,そのリズムが消えて,汚らしくなる。誰だったか,歌手が,最近,

Un

と,鼻に抜けない人が目立つようになった,と言っていたような気がする。音感というか語感の感度が鈍ってきたのかもしれない。せっかく「ん」を発明したのに。

「んまい」

も,unmaiではなく,鼻に抜けるから面白い。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
大槻文彦『大言海』(冨山房)






今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
【関連する記事】
posted by Toshi at 04:41| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください