2015年06月15日

愛想も小想も


いまや死語に近いが,

愛想(あいそ)も小想(こそ)も尽き果てる

とは,相手の言動などにあきれ果て、好意や愛情がすっかりなくなってしまうこと。何ごとも,中途半端な僕は,

愛想も小想も尽き果てた,

こともなければ,

愛想も小想も尽き果てられた,

こともない。類語は,

愛想も臍の緒も尽き果てる,

と言うのだそうだ。「小想(こそ)」は語調を強め,整えるために添えられたもの,ということだ。

味噌もくそも一緒,

という言い回しと同様,

愛想が尽きる,

を強めるために,言葉の流れというか,走りというものだろう。

精根尽きる

を,

精も根も尽きる,

というのに似ている。「愛想」というのは,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/414077255.html

でも触れたが,

人に接して示す好意や愛らしさ,

とあって,その他に,

好意のあらわれとしての茶菓などのもてなし
飲食店の勘定(書)

とある。語源は,

「愛(愛らしい)+相(様子)」

とある。好意の互恵性というのがあって,

「他者から好かれると,その人を好きにならずにはいられない」

という説がある。これは,前にも書いたが,

第一には,好意的な自己概念を求める欲求がある,
第二には,自己評価と類似した意見の他者を好む傾向がある,

という仮説がふたつあることによるらしい。しかし,giveばかりでは,貸が増えて,気持ちの帳尻が合わない。

「愛」という字の,「旡(カイ・キ)」は,象形文字で,腹が一杯になって胸をつくさま,で,「欠」(腹が減ってしぼむ)の反対。で,「つまる」「いっぱいになってつかえる」といった意味を持つ。「夂」は,下向きの足の形を描いたもの。「降」,「各」(足が使える),「逢」等々,足を示す印として用いられる。で,「足」や「行きなやんで足が遅れる」という意味を持つ。

「愛」は,

「心+夂(足を引きずる)+旡」

で,心が切なく詰まって,足もそぞろに進まないさま,

を表し,「いとおしむ」「めでる」「かわいがる気持ち」という意味を持つ。

「想」は,「相+心」だが,「相」は,「木+目」で,気を対象に目で見ること,AとBとが目で向き合う関係を表し,「ある対象に向き合って対する」意を含む。で,「互いに」「二者の間で」「みる」「たすける」といった意味をもつ。「心」は,心臓を描いたもの。「滲」「沁」「浸」等々と同系。血液を血管の隅々まで,沁み渡らせる心臓の働きに着目したもの。「心臓」「こころ」「真ん中」といった意味になる。

で,「想」は,ある対象に向かって,心で考えることを意味する。

「愛想」は,好意を持って,相手にひたすら向き合う,

という意味となるのだろうか。『古語辞典』では,

「愛想(あいそう・あいそ)」は,

「愛相」(あいそ)
あるいは
「愛想・愛相」(あいさう)

の両方で出ていて,「愛相もこそも尽く」と出ている。で,

「愛崇(あいそう)」の転,

とある。「愛憎」あるいは,「愛相」の字を当てる。で,「愛崇」には,

人に接する時に示す行為と敬意,
言葉遣いや物腰に感じられる情趣・風情,

とある。

念のため,「崇」を調べると,「崇」の字は,「山+宗」で,↑型にたかいこと,転じて,↑型に貫く意を派生した,とある。「たかい」「たっとぶ」「終わりまで貫き通す」という意味を持つ。「宗」は,「宀(やね)+示(祭壇)」で,祭壇を設けたみたまやを示す。転じて一族集団を示す。「族」は,kに転じたことば,という。だから,「みやまや」「本家」「中心」「たっとぶ」等々の意を持つ。

『大言海』は,「愛崇」について,

愛敬相より移る,愛敬の条をみよ,あいそというのは,略転,心に移して書くなり,

とある。で,「音頭」,「おんどう」を「おんど」というのと同じ,とある。意味は,

ひとあしらいのよきこと,礼あり,情あること,

となる。「愛敬」は,

愛敬相より転じて,すべて顔色に可愛気のあること,

とある。「愛嬌相」とは,

柔和な心と温和な恵みを施す容貌,態度。阿弥陀如来,地蔵菩薩などの相貌にいう,

とある。こう考えてくると,

愛想も小想も尽き果てた,

と言っているのが,誰かによっては,大変なことなのかもしれない,と思えてくる。仏の顔も三度,というのに似ていなくもない。

参考文献;
金田一京助・春彦監修『古語辞典』(三省堂)
大槻文彦『大言海』(冨山房)
藤堂明保他編『漢字源』(学習研究社)







今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
【関連する記事】
posted by Toshi at 05:20| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください