2015年07月02日

SST


モーシィ・タルトン『シングル・セッション・セラピー』を読む。

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シングル・セッションについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/414952506.html

で,その実践については触れた。本書は,そのバックボーンなる著書である。積読になっていたのをようやく読んだ。

本書では,シングル・セッション・セラピーは,

SSTと略される。本書では,シングル・セッション・セラピーを,

「前後一年間にセッションをもたずにセラピストとクライアントが一回の対面面接を行うこと」

と定義する。多く,セラピストは,

「一回しか面接しないクライアントは計画通りいかなかったケースであり,ドロップアウト」

と見なす傾向があり,たとえば,著者が1985年に調べたケースでは,

セラピストの最も多い面接回数は一回,
全患者の30%は一年に一回しか面接を選択していない(無料ないし低料金にも拘らず)

であり,後に10万人の外来予約患者で追跡したときも,シングル・セッションの傾向は一貫していた。しかも,著者自身が,200人を追跡調査した結果,78%は,

「一回の面接で欲しかったものは手に入ったので当該の問題に対しては以前より良い感じあるいはかなり良い感じを持つようになった」

との答えで,セラピストが気にいらなかったのを理由としたのは,10%であった。つまり,

「ドロップアウトはクライアントあるいは介入システムの失敗を意味する」

と,セラピストが考えるのは,根拠が薄い,としている。著者は,フォローの電話の中で,変化があったと話すクライアントに,こう言う。

「セラピストとして感じるんですけど,今回の変化の主役を務めたのはあなたですね。」

と。それを,

変化の自然なプロセス,

と名付ける。エリック・バーンの,

「患者が回復したときには,『治療が自然の働きを助けた』とセラピストは言うべきであろう。」

という言葉を,エビグラフに使った章で,こう書く。

「私は『変化の自然なプロセス』という用語を使うことによって,既にそこに存在する(自然な)ものの役割と,時間と動き(プロセス)の治療的な役割と,それにセラピストが最初に患者に出会った時点ですでに進行中の不可避な変化を強調しようとしている。患者が同じ場所で行き詰まったままの膠着状態でいるとは考えていない。これらのプロセスの中に,信じられないくらいの治癒力が秘められている。セラピストがそれを患者の内なる力強さや知識と結合させるとき,たった一回のセラピーにおいても,それは強力に活用される。一つ一つのセッションがその時と場所を超えて,より大きな文脈の中で考察されるとき,あなたの期待を大きく上回ることが起こり得る。」

著者は,シングル・セッション・セラピーのセラピストを,

構成的最少主義者

とも名づける。そこでは,関係づけの段階を大事にする,として,

(長い治療プロセスの一部として見るのではなく)「各セッションを,そしてあらゆるセッションを,全体的なそれ自体で完成しているもの」としてとらえること,

(問題を大きくて深く解決には長い年月がかかるとみなすのではなく)「小さいことはすばらしい,ということである。私たちは,物事を一度に一つずつ扱い,ある瞬間を捕えて,現在あるがままに力づけたいのである。知覚や感情,あるいは行動における小さな変化は,クライアントやその家族による新しい変化を引き起こして,新しい生活環境に身を置くことになっていくかもしれない。」

(科学や専門の治療のモダリティに当てはめ,正しいかどうかではなく,クライアントに役に立つために)「小さな変化を一つ期待し,良いところを引き出し,問題を拡大させるのではなく焦点を絞るということであれば,セラピストは,希望を引き出し,取り組み可能な解決策に導く可能性が高くなる。」

等々を挙げる。ここにあるのは,クライアントの力を信じ,みずからが,それを解決していく力がある,と見なす視点である。エリクソンが,

みずから考えを変える力があることを,相手自身が気づけるような状況を作っていく,

のがセラピストの役割である,といっていたのに通じる。

巻頭で,「日本語版の刊行によせて」で,宮田敬一さんが,

「まず,クライエントの問題に対して共感します。次に,焦点づけです。クライエントの否定的な物語にもっと良い意味づけをします。さらに,実際にやれる可能性のある解決法を示します。そして,タルモンさんはセラピストの資質として,人間的な暖かみを持つ人,複雑な問題の中から大事なところに焦点を当てる能力を有すること,楽天的であることを挙げています。」

と,紹介しているが,SSTのチェックリストは,そのことを,如実に示している。

1.このセッションこそが大事なセッションだ
2.各々のセッションを,そしてすべてのセッションを全体的なそれ自体で完結しているものとして考察する。
3.自分の持っているものは,今である
4.すべてここにある
5.セラピーは最初のセッションの前に始まり,その後もずっと続く
6.一回に一歩ずつ進むこと
7.運命の輪を急いで回したり,作り直す必要はない
8.力は患者の中にある
9.患者の力を過小評価するな
10.役に立つためにすべてを知っている必要はない
11.人生は驚きに満ちている
12.人生はセラピーよりずっと偉大な教師である
13.時間,自然,そして人生は偉大な治療者である
14.変化を期待しよう,それはすでに始まっている

ソリューション・フォーカスト・アプローチでいう,「ワンダウンポジション」であり,

変化はたえず起こっており,必然である,

というスタンスを思い起こす。

参考文献;
モーシィ・タルトン『シングル・セッション・セラピー』(金剛出版)







今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 04:52| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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