2015年07月04日

暗黒物質


鈴木洋一郎『暗黒物質とは何か』を読む。

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著者は,東京大学宇宙線研究所の低バックグラウンド多目的宇宙素粒子検出器XMASS(Xenon detector for weakly interacting MASSive particles)実験のプロジェクトリーダーである。

http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/xmass/index.html

には,

「XMASS(エックスマス)実験は、液体キセノン(約-100℃)を用いてダークマターを直接探索することを目的としています。」

とある。ダークマターとは,

暗黒物質,

である。

「暗黒物質は,それが私たちの知っている通常の物質(星や空気や私たちの体などを構成する原子や分子)とはまったく性質の異なる物質であることはわかっています。まったく光を発しないので見ることはできず,通常の物質とはほとんど反応しないので,あらゆるものをスルスル通り抜けてしまうのです。」

しかし,宇宙にある物質はすべて原子や分子でできているが,質量をエネルギーに換算した場合,宇宙全体のエネルギーの,

約4.9%,

でしかない。最も多いのが暗黒エネルギーで,

約68.3%,

残りの,

約26.8%,

が暗黒物質である。しかも,

「この暗黒物質がなければ星は生まれず,宇宙は今のような構造を持たない,ただ原子,分子が飛び交うだけの空間だったかもしれません。」

だから,地球もなければ,われわれ人類も存在し得なかったことになる。最初に「ダークマター」と名付けたのは,ツビッキーだが,彼は,「1000個以上の銀河の集まる『かみのけ座銀河団』の質量を推測していて,誤差範囲では説明できない『質量欠損』」に気づき,

「銀河団の領域に『光(電磁波)をまったく発しない重力源』があるのではないか」

と仮定した。たとえば,地球は太陽の周りを秒速30キロメートルの速さで回り,太陽系は,秒速230キロメートルで回転している。しかし,本来,

「銀河系の質量のほとんどが集中しているので,中心部に近づくほど星が受ける重力が強い。ニュートン力学によれば,重力の強さは距離の2乗に反比例するので,重力源から離れるほど受ける重力は弱まります。だとすれば,強い重力を受ける中心部ほど回転速度は速くなります。(中略)ところが,…その回転速度は内側でも外側でもほぼ一定であることがわかりました。」

もしニュートンの法則が間違っていないとすれば,

「そこには目に見える物質以外の重力源があるとしか考えられません。銀河の外側ほどその重力源が多いことになります。」

当然,太陽系の周辺にも暗黒物質がまとわりついていることになる。

また,138億年前,宇宙は,10-36秒後から10-34秒後というわずかな時間に堆積が指数関数的に急膨張を起こし,10-34センチメートルから1034倍以上に膨れ上がった。それから38万年後,宇宙の晴れあがり期に,3000度でしたが,温度分布は一様ではなく,「ゆらぎ」があったとされる。しかし,この宇宙を形成するには,

「ゆらぎが足りない」

と言われる。現在観測されるそのなごりの「宇宙背景輻射」のゆらぎでは,現在のような星や銀河が存在する宇宙はできない,とされる。

「『宇宙の晴れ上がり』のときの物質分布にはもっと大きな濃淡さがなければ銀河は形成されません。(中略)現実におびただしい数の銀河が生まれている以上,ビックバンの38万年後には,観測地の1000倍に相当する物質の濃淡があったはずです。それが『宇宙背景輻射』に反映されていないのは,その『物質』が通常の物質と違う性質を持っており,光を素通しするからと考えられます。」

現在,暗黒物質の質量は,

陽子の100倍から1000倍

と見積もられている。

「仮に100倍だとすると,その個数は1.58の100分の1。つまり100立方メートルあたり1.58個」

となる。「砂漠のゴマ粒」を探す以上の難題である。各国の研究グループが暗黒物質検出にしのぎを削っているが,XMASSでは,

キセノンをシンチレーター(蛍光物質)

として使っている。キセノンを使って,光を検出しようとしている。

「闇黒物質に蹴飛ばされたキセノンの原子核は,周囲のキセノンを電離させるなどの影響を与えながらエネルギーを放出して,最終的に止まります。蹴飛ばされたキセノンからエネルギーを得た,周りのキセノンは,紫外線を出して蛍光が発生します。その光が,642本の光電子増倍管が捕まえる信号なのです。」

しかしすぐにあるかないかがわかるわけではない。

「新種の昆虫を発見するのとは違います。長い時間をかけてデータを蓄積し,それを精密に解析することによって,初めて『発見』となるのです。」

あるかないかではなく,

確率の問題,

であり,

「40~50日に一例程度の反応しかない」

中でのデータ蓄積が続くのである。今現在も,その地道な作業が続けられている。

宇宙=自然理解の一歩,

のために。

参考文献;
鈴木洋一郎『暗黒物質とは何か』(幻冬舎新書)







今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 05:23| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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