2015年07月20日
けれんみ
けれんみは,
外連味
とあてる。
はったりを利かせたりごまかしたりするようなところ,
という意味だ。「けれんみたっぷりの芝居」「けれんみのない文章」といった使い方をする。
語源辞典には,「けれんみがない」で出ていて,
「外連(歌舞伎芝居用語 わざとらしく客受けする演技)+み(接尾語)+がない」
で,はったりやごまかしがない,誠実で自然な態度をいう,とある。
外連
は,戯の慣用語ゲの当て字,外(ゲ)を使い,「戯れにはったりをする役者を道に外れた連中」と見て,「外連」を使い,意味を通わせたと思われる,としている。
他の説では,「けれん」は
「江戸末期、歌舞伎で宙乗りや早替りなど大掛かりで奇抜な 演出をいった演劇用語から一般に広まった。それ以前は、他流の節で語ることをいった 義太夫節の用語で、『正統でない』『邪道だ』の意味を含む言葉であったことまでは解っているが,語源は未詳」(http://gogen-allguide.com/ke/kerenmi.html)
とし,「けれんみ」が使われるのは近代以後としていて,すこし矛盾がある。こういうときの『大言海』は,
(上手の節を真似て,似て非なるに起こり,外の者も,それに連れて真似る意なりと云う,いかが)
として(「いかか」とは,珍しく,審らかではないらしい),
義太夫の節を語るに,本法を破り,おのが作意にて,偏に味をつけて語ること,
とし,転じて,
事を紛らかすこと,
とある。どうやら歌舞伎の演技ではなく,義太夫の我流を言ったものらしい。「けれん」も「けれんみ」も『古語辞典』には載らないが,『広辞苑』には,共に載っている。近代以後,という説は,一理ある。
けれんは,辞書では,
「もとは演劇用語で、歌舞伎で早変わりや宙乗りなど、奇抜で大がかりな芸によって観衆に意表をつくような演出をいうようになり一般にも広まった。
かつては『邪道な』という意味合いも含まれていたが、現在では『けれんみのない文章』というように「ない」を伴なって、いい意味合いで使われることが多い。」
とある。例の,市川猿之助の,
「『義経千本桜』「四ノ切」で披露した「宙乗り」を皮切りに、明治の演劇改良運動以後は邪道として扱われ顧みられなかったケレンの演出を次々に復活させた『猿之助歌舞伎』」
がまさに,外連である。
けれんみの類語は,
はったり,うけねらい,巧を弄して拙を成す,芝居気たっぷり,子供騙し,
等々いい意味はない。しかし,
ごまかし,
横様,
わざとらしい,
とは少しニュアンスが違うようだ。もし,
中身のないこと,
という意味なら,むしろ,
こけおどし,
の方が近い。こけおどし(こけおどかし)は,
虚仮威し,
と当てる。
見えすいたおどし,
愚か者を感心させる程度のあさはかな手段。また見せかけはりっぱだが,中身のないこと。
実質はないのに外見だけは立派に見えることにもいう,
とある。
虚仮は,
内心と外相が違うこと,
思慮が浅い,愚かなこと,またそういう人,
(名詞などの上に付けて)むやみにするという意を添え,また,けなして言うのに用いる,
とある。
虚仮にする
虚仮の行
虚仮おしみ
虚仮歌
といったふうに使うが,総じて,嘲るにおいがある。語源は,仏語だが,
虚仮(きょか)の呉音,
で,「世間虚仮,唯仏是真」からきているそうだ。どうみても,「虚仮」は,中身のないのに,虚勢を張っている,ところから転じて,ただの間抜け,を意味するようになったようだが,
虚仮の一念,
というか,
虚仮の一心,
とも言う。上辺だけでは,ひとを見誤る。
参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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