2015年07月22日

新造


新造,

というと,例の(といっても,もう一般に通じないだろうが)

「ご新造さんえ、おかみさんえ、お富さんえ、いやさお富、久しぶりだなァ。」

という与三郎の台詞が思い浮かぶ,いつぞや,落語会で,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/417758970.html

さん生師匠の「お富与三郎」を伺ったせいかもしれない。台詞は,与三郎の,

「しがねぇ恋の情けが仇,命の綱の切れたのを,どう取り留めてか木更津から,めぐる月日も三年(みとせ)越し,江戸の親にやぁ勘当うけ よんどころなく鎌倉の谷七郷(やつしちごう)は喰い詰めても,面(つら)に受けた看板の疵がもっけの幸(せいうぇ)いに,切られ与三と異名をとり,押借り,強請(ゆすり)やぁ習おうより慣れた時代(じでえ)の源氏店(げんじだな),その白化(しらばけ)た黒塀に,格子造りの囲いもの,死んだと思ったお富たぁ,お釈迦さまでも気がつくめぇ,よくまぁ おぬしぁ 達者でいたなぁ。」

と,有名な文句につながるのだが,この背景は,

「若旦那・与三郎は、木更津海岸で美しいお富を見染め、たちまち二人は恋に落ちます。しかしお富は、妾の身。逢引が見つかって与三郎は、身体に34ヵ所の刀傷を受けて海にほうりだされます。お富は海に身を投げますが、救いあげられ、江戸に売られ、人の世話で何不自由なく暮らします。数年後、身を持ち崩した与三郎が仲間の蝙蝠安とゆすりに行った源氏店で、なんと、お富の家に。互いに死んだと思っていた二人は、再会に驚いて」

という顛末になる(『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』)。因みに,「げんやだな」とは,

「玄冶というのは三代将軍家光の時代に将軍お抱えの医者として名を馳せた岡本玄冶、その屋敷のあった所が玄冶店です。『冶(や)』の字を『治(じ)』に置き換えると『げんじ』となり、そこへ「源氏」という字を当てて芝居の舞台にしました。」

ところから来ている。

さて,話を戻すと,新造とは,『古語辞典』では,

新しく造ること,
新婦の称,
近世前期,新しく客を取るようになった遊女,
近世後期,禿あがりで比較的若く,姉女郎にに付属して自分の部屋を持たない遊女,

とある。ところが,これに「御」をつけて,

御新造となると,

新築の建造物を敬って言う語,
身分ある人の新婦の敬称,
武家・医者・上中層町人などの妻女の敬称,

と変わる。与三郎の,「御新造さんえ」は,多分に皮肉が交じっている(お富は,多左衛門の妾になっている)。

このいきさつは,やはり『大言海』にあった。

(貴人,妻を迎ふる前に,新しく其の居所を造る故に云ふと云ふ。其の居所指して云ふ名称なるべし)

として,大穴持命が娶るために屋を造る云々という『出雲国風土記』を引いていた。で,

身分ある人の新婦を呼ぶ敬称

とし,呼称の階層を,

奥様の次,おかみさんの上,

略して,

ごしんぞ,

と呼ぶ,とある。ひょっとすると,敬称の御新造が先にあり,それに準えて,遊女を称したのではあるまいか。そのせいか,遊女の新造にも,

振袖新造,
留袖新造,
太鼓新造,
番頭新造,

があるらしいが,普通は振袖新造を指す,という。振袖新造は,

「吉原で御職女郎(その娼家の中で最上位の遊女。最も売れっこの遊女)に付添った若い見習い(まだ水揚げの済まない)女郎のこと。16~17歳で客をとるが、新造はその前の段階を指す。身の回りの世話をする。姉さん女郎のところに複数の客が登楼している場合に、待たせる方の客の話相手をするのも仕事。美人で器量がいいと、引込新造(振袖新造の中でも、禿時代から花魁に付いて勉強している花魁候補生)になる。」

要は,売り物のとしての付加価値を高めるために,吉原の娼家が,あれこれランクを付けたものなのだろう。「新造」こそ,いい迷惑である。

語源的にも,

「新(新しく)+造(つくる)」

で,嫁の居所を新たに造る意から,武家や町家の妻女の意を表した,

とある。そういう財力のある者でなくては,御新造と呼べる嫁を娶れなかった,というべきかもしれない。

御新造は,

ごしんぞ

と,「ごしんぞう」の訛ったもの。与三郎の台詞はそれ。それにしても,昔の,歌謡曲「お富さん」は,

粋な黒塀 見越しの松に
仇な姿の洗い髪
死んだはずだよお富さん
生きていたとは お釈迦さまでも
知らぬ仏の お富さん
エーサオー 玄治店(作詩 山崎正)

と,一場をきれいに描きっている手際に,呆れる。子ども心に耳に残った言葉が,うろ覚えなのに気づかされる。。

参考文献;
http://ginjo.fc2web.com/173otomi_yosaburou/otomi.htm
http://www.kabuki-bito.jp/kabuki_column/todaysword/post_174.html






今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 04:43| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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