2015年07月31日

節税


富岡幸雄『税金を払わない巨大企業』

ダウンロード (14).jpg


著者は,ご自分のことをこう紹介する。

「戦後,国税庁の職員として,徴税の現場や税務行政の管理を経験しました。…毎年のように,脱税摘発件数と摘発額の双方で第一位。『節税』という言葉を初めて発表したのは,大蔵事務官時代の私でした。…また私は,第一回公認会計士試験,および第一回税理士試験の第一号合格者でもあります。退官後は中央大学の教授として税務会計学を創始し,…多くの会社の顧問も担当して参りました。」

その動機を,あとがきで,徴兵後無事復員したとき,

「日本を戦争に駆り立てた原因のひとつに,国家財政のもろさや経済の脆弱さが挙げられます。日本の財政や経済の弱さを補うために,他国に侵出を企んだのです。―こんな悲惨な戦争を二度と起こさないためにも,日本を内側から強くしなければならない。そうしなれば,戦争で亡くなった人たちに申し訳ない。」

という決意にあるとしています。それだけに,

「現在の日本の財政が著しく弱いのは,税の不公平さに起因することに気づきました。特に,大企業を優遇し,その財政面での“帳尻合わせ”をさせられているのが,一般国民や中小企業だった…。」

と語る言葉には説得力がある。

「法人税と法人住民税,法人事業税を合計した法定税率」(マスコミの使う実効税率)

は,35.64%に下げられ,さらに,2015年度から数年以内に20%台に引き下げた。しかし,著者は言う,

「大企業は,課税ベースである課税所得が,実際にはタックス・イロ―ジョン(課税の浸蝕化)やタックス・シェルター(税の隠れ場)によって縮小され,実際の納税額は大きく軽減されている」

と。たとえば,法定税率が38.01%だった2013年,負担の低い企業を例示している。

三井フィナンシャルグループ0.002%
ソフトバンク0.006%
みずほフィナンシャルグループ0.09%
三菱UFJフィナンシャルグループ0.31%
みずほコーポレート銀行2.60%
みずほ銀行3.41%
ファーストりてーリング6.92%
オリックス12.17%
三菱UFJ銀行12.46%
キリンホールディングス12.60%

等々。その他,住友商事13.52%,三菱重工業16.76%,小松製作所18.76%,日産自動車20.45%,サントリーホールディング21.16%,本田技研工業25.72%,トヨタ自動車27.97%…と続く(トヨタにいたっては,法人税を五年間も払っていなかった)。詳しくは本書を見ていただければいい。にもかかわらず,

「早急に25%まで引き下げる」

よう,経団連は申し入れている。しかし,

「納税額は『課税所得×税率』で算出されます。…たとえ税率が高くても,課税ベースである課税所得を低くおさえることができれば,実際の納税額を少なくすることが可能です。実際に,大企業の納税額が少なく,実効税負担率が低いのは,課税所得を少なくできるからです。」

その仕組みとして,著者は,

①企業の会計操作
②企業の経営情報の不透明さ
③受取配当金を課税対象外に
④租税特別措置法による優遇税制
⑤内部留保の増加策
⑥タックス・イロージョンとタックス・シェルターの悪用
⑦移転価格操作
⑧ゼロ・タックスなどの節税スキーム
⑨多国籍企業に対する税制の不備と対応の遅れ,

を具体的に挙げている。その他,税制上,分離課税などによって,税負担の不公平も加わり,

「日本社会は,現在,税を逃れる手段をもつ1%足らずの富裕層と,その尻拭いをするように重税に苦しむ99%を超える貧困層とに二極化しつつあります」

と,著者は憂う。結果として,

「所得税と法人税の空洞化により,日本の富と税源が失われて,財政赤字の増大を招いている」

ことになる。法人税を,1%下げるごとに4700億円の税収減になる。20%台となると,2兆6508億円以上の税収減になる。その代替に,

配偶者控除の撤廃,
パチンコの換金に課税,

果ては,カジノ構想と,本命を攻めず,明後日の方向に,それも多く国民負担の方向に舵を切ろうとしている。

「企業は法人税を法定正味税率どおりに納税し,受取配当にも一定の税率を課し,優遇税制を見直すことです。現状での消費増税や再増税は,法人税を引き下げるためのバーターではなかったのでしょうか。
私がこのように日本の大企業優遇を憂うのは,借金まみれの日本の財政を健全化させ,活力と競争力のある企業社会に改造し,強い経済を創出して,国民経済を繁栄させたいがゆえです。」

という,まっとうな意見の通る見込みはない。庶民にできることは,まっとうに税金を払わない企業の世界規模の不買運動をすることかもしれない。

参考文献;
富岡 幸雄『税金を払わない巨大企業』 (文春新書)






今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 05:47| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください