2015年08月06日

~ない


仕方がない,については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/419038957.html

で触れたが,同義の表現として,

仕様がない,
やむを得ない,
詮方ない,
詮ない,
余儀ない,
是非もない,
よんどころなく,

等々がある。どちらかというと,

他に打つ手がない,
そうする他ない,
避けて通れない,
逃げられない,
不可避の,

といった意味だが,いずれも,「~(余儀,是非,栓,仕様,仕方,等々)」がついて,「ない」となっているが,なんとなく,これを,昔の人は使い分けてたのではないか,とふと気になった。

「しかた」は,前にも書いたが,

「サ変の連用形,シ(為)+方」

やり方,手段である。「仕方」は,だから,

なすべき方法,やりかた,
ふるまい,
(仕形とも書く)てまね,

という意味が載る。「仕様がない」の「仕様」も,似た意味で,「仕様」は,

「仕(しごと)+様(ほうほう)」

で,物事をする手段,方法,を指し,

施すべき手がない,

という意味から,「始末におえない」「しょうがない」に転じた。「やむをえない(やむをえず)」は,

已むを得ない,
とか
止むを得ない,

と当てる。ほかにどうしようもない,仕方ない,という意味だが,「やむにやまれぬ」は,

とめようとしても止められない,そうするしかない,

という意味だが,「やむなく」「「やむない」となると,仕方がない,となる。「やむ(已む・止む)」は,

長く続いていた現象や状態が自然に止まり,消え失せる,

という意味で,「やむなく」も「やむにやまれず」も,自力ではなく,他力,ありていに言えば,他責のにほひがしなくもない。

「詮方なし」は,語源が,

「サ変動詞の未然形『せ』+意志の助動詞『ん』+方(方法)」

なので,「為ん方無い」が正しい。「詮方ない」は,「詮無い」との関連の当て字ではないか。で,「詮無い」は,

「詮」は,中国語の選ぶ,具わる,

という意味で,「詮」の,「全」は,

「集めるしるし+工または玉」

で,ものを程よくそろえること。「言」をくわえた「詮」は,

言葉を整然と取り揃えて物事の道理を明らかにすること,

とある。「詮なし」は当て字らしい。「詮方なし」が語源とある。『古語辞典』をみると,

「詮は物事の理の帰着するところ」

とあり,

無益・無意味である,
かいがない,

という意味が載っていて,「詮方ない」のやむを得ないというニュアンスではなく,「やる意味がない」という意味から来ているようだ。用例も,

「一人当千と聞ゆる平家の侍どもと軍して死なんとこそ思ひつれども,このご気色ではそれもせんなし」

とあるので,しかたないというより,その甲斐がない,のでしかたない,と仕方ないは,結果として訪れる。

「余儀ない」の「余儀」は,

「余(他)+儀(方法)」

で,「仕方ない」の「仕方」や「仕様がない」の「仕様」と似ている。たた,「儀」は,

ほどよく整った手本となる人間の行為,

が原義で,手本(儀法)とか作法(儀式)といった意味がある。

「是非(も)ない」の「是非」は,

是と非,
正と不正,
良し悪し,

の意味であり,是非を云々することもない,というところから,仕方がない,という意味になったと思える。似た使い方で,「是非に及ばず」は,前にも書いたが,

織田信長が本能寺で光秀軍に取り囲まれた際,

「是非も及ばず」

と漏らしたと,『信長公記』にある。この場合はわかる。是非を云々するに及ばない,そんな暇はない。そういう切迫した事態だとということではなく,

おのれが重用した惟任光秀が,

という意味では,おのれの所業の付けである,仕方ない,というニュアンスではないか。『大言海』は,

為ん方ない,是非するまでもない,やむところをえず,

と,「是非」の意味を載せる。

「よんどころない」は,

「よりどころ(根拠)がない」

の音便化。

http://ppnetwork.seesaa.net/article/415685379.html

でも書いたが,結局,手段がない,是非(のいとまも)ない,と理由をあげながら,つまるところ,

(自力では)止むをえない,

と諦めてしまう。それは,他責化といってもいい。

潔い,とは思わない。生きる執念がなさすぎる。おのれを大事にしない,というよりは,大きな流れに逆らおうとしない,その結果命を粗末にすることになる。まだ打つ手はあるにもかかわらず。だから,何度でも為政者に騙される。いつまで,こんなことを繰り返すのだろうか。まあ,おのれにもあるその心性の,自戒を込めて。

参考文献;
大槻文彦『大言海』(冨山房)
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
簡野道明『字源』(角川書店)







今日のアイデア;
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posted by Toshi at 05:23| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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