2015年08月16日
向っ腹
「むかっぱら」は,
向っ腹
とか
向かっ腹
と書く。
むかむかと腹を立てること。
どうしようもなく腹立たしい気分。
やり場のない怒り。
という意味である。語源的には,
「むかばら」の音変,
であるとされるが,手元の『語源辞典』では,
「ムカマカ(擬態語)+パラ(腹が立つ)」
とあるが,どうも首をかしげたくなる。「腹」は,
業腹
とか
腹立つ
とか
腹が煮える
とか
腹に据えかねる
等々だけでなく,
腹を割る
とか
腹を決める,
等々,心や気持ち,あるいは胆力といった意味もある。前にも触れたが,語源的には,
「ハラ(張る)の変化」で,飲食したり退治を宿したりハル(張る)ところという意味,
というのと,いまひとつ,
「ハラ(原)」が語源で,人体の中で広がって広いところ,の意,
という説がある。『大言海』は,
「廣(ヒロ)に通ず。原(ハラ)・平(ヒラ)など,意は同じと云ふ。又張(ハリ)の意」
と,集約している。他の辞典にはないが,『大言海』には,
料簡
の他に,
怒り,立腹
の意味を載せている。語源で言う,「はら」に,「怒り」の意味が含んでいた,とも言える。『古語辞典』で,
心底
意趣,遺恨などを含んでいる,内心
と,載せているのに通じる。
まあ,向かっ腹は,むらむらとくる怒り,である。業腹は,
「業火(激しい)+腹」
で,非常に激しい怒り,
腹の中で業火が燃えるような,ひどくいまいましい,
という意味で,似ているが少し違う。むかむかする,のである。吐き気を同じく,むかむか,というから,似たように,腹の内からこみあげてくる怒りである。ただ,そこに,
いまいましさ,
があるのが業腹である気がする。いまいましいは,
忌忌しい,
で,不潔で,汚らわしい,不遜,といった意味を含めて,
癪に障る,
小癪な,
という思いである。向かっ腹には,それがない。ただ,その理不尽さ,その不合理さに腹が立つのである。現政権のしていることに感じるのは,その,
向かっ腹,
である。怒りは二次感情ということは,
http://ppnetwork.seesaa.net/article/408166432.html
で触れた。向かっ腹も,業腹も,心の中にある価値観と抵触して,
許しがたい,
という感覚から来ているに違いはない。いま,怒りの背後にある,
価値観,
の戦いである。それは,
誰かのためなのか,
誰ものためなのか,
そろそろ利権にまみれた,誰かが得するための政治を踏みつぶさなくては,おのれの血でその付けを払わされることになる。
参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください