喃
喃は,
のう,
で,一つは,感嘆詞で,
いい天気だ喃(のう),
等々と,人に呼び掛け,または同意を求める時に用いる,
とある。「もし」「ねえ」「なあ」といった意味になる。その他に,『古語辞典』では(「なう」),
驚き・喜び,畏れなどの時発する声,
という意味があり,「なう,おそろしや」「なう,うれしや」といった使い方になる。『大言海』では,
南無の音便化と云ふ,
とあり,喃の字を作る,とする。
いまひとつは,終助詞「な」の転で,
文末にあって感動の意を表す,
とある。しかし,『古語辞典』によると,
相手の同意を求めつつ訴える意を添える,
とある。「~だよね」「~ね」という意味になるのだろうか。僕が小説でみた「喃」も,例えば,佐々木味津三『旗本退屈男』で,よく使われていた記憶があるが,この含意であった。しかし,そこには,殿さまが下々言うように上から目線のニュアンスがある。
語尾に使った場合,感嘆なのかどうかの区別は微妙に見える。違いは,だから,
一方的ないし,自己完結した呼びかけか感嘆なのか,
それとも,
相手の同意を求める訴えなのか,
というところにある。文面ではわからないが,文脈のなかでは歴然としているのではなかろうか。
「喃」の字の,「南」は,納(中に入れる)と同系の言葉で,中に籠るという意をもつ。で,「口+南」は,
口の中に籠ってはっきり聞き取れない,
という意味で,
くちごもりつつしゃべる
という意味で,「喃喃(なんなん)」とつづけて,
もたもたといつまでもしゃべる,
という意味になる。で,
蝶々喃々(ちょうちょうなんなん),
といった使い方をする。「のう」と訓ませるのは,わが国独特で,
喃(のう),
で,人に呼び掛ける意味に使う。「喃々(のうのう)」で,
もしもし,
となる。
その他,「喃」で始まる言葉は,
喃語
喃喃(なんなん)
がある。
喃語
は,
乳児のまだ言葉にならない発声,
という意味だが,その他に,
くどくどと話すこと。
男女がむつまじくささやき合うように話すこと。むつごと。
喃喃
も,「なんなん」と訓ませると,
口数多くしゃべり続けるさま,
という本義になる。
しかし,
~だよね,
と言われるのと,
~だのう,
と言われるのでは,印象が変わる。少なくとも,語尾の「喃」が死語になったのは,身分社会が,一応表面上消えたせいだろう。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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