三十二相
三十二相兼ね具わった,
とはどういう人を指すのか。三十二相というのは,
仏がそなえているという32のすぐれた姿・形,すなわち,
手過膝(手が膝より長い),
身金色
眉間白豪(はくごう)
頂髻(ちょうけい)相(頭頂に隆起がある)
という意味であるが,転じて,
女性の容貌・風姿の一切の美相,
の意味になる,とある。
これだとよくわからないが,『大言海』は,こう書く。
「釈迦如来の身体に具したる,異常なる表象(しるし)」
とあって,腑に落ちる。後半の意味はともかく,
三十二相八十随形好(ずいぎょうこう)
あるいは,
三十二相八十種好(はちじっしゅ ごう)あるいは八十随形好(はちじゅうずいぎょうこう)
とも言う。つまり,仏の身体に備わっている特徴として,
「見てすぐに分かる三十二相と、微細な特徴である八十種好を併せたもの」
である。「仏像及び仏画はこれに倣って作成される」のだという。ついでだから,
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%8D%81%E4%BA%8C%E7%9B%B8%E5%85%AB%E5%8D%81%E7%A8%AE%E5%A5%BD
http://www.heian-bussho.com/style2.html
によると,多少の異同があるようだが,載っているのを,(自分の勉強のために)あげておくと,
1. 足下安平立相(そくげあんぴょうりゅうそう) 足の裏が平らで、地を歩くとき足裏と地と密着して、その間に髪の毛ほどの隙もない(扁平足)。
2. 足下二輪相(そくげにりんそう) 足裏に輪形の相(千輻輪)が現れている。仏足石はこれを表したもの。
3. 長指相(ちょうしそう) 10本の手指(もしくは手足指)が長くて繊細なこと。
4. 足跟広平相(そくげんこうびょうそう) 足のかかとが広く平らかである。
5. 手足指縵網相(しゅそくしまんもうそう) 手足の各指の間に、鳥の水かきのような金色の膜がある。
6. 手足柔軟相(しゅそくにゅうなんそう) 手足が柔らかで色が紅赤であること。
7. 足趺高満相(そくふこうまんそう) 足趺すなわち足の甲が亀の背のように厚く盛り上がっている。
8. 伊泥延腨相(いでいえんせんそう) 足のふくらはぎが鹿王のように円く微妙な形をしていること。伊泥延は鹿の一種。
9. 正立手摩膝相(しょうりゅうしゅましっそう) 正立(直立)したとき両手が膝に届き、手先が膝をなでるくらい長い。
10. 陰蔵相(おんぞうそう) 馬や象のように陰相が隠されている(男根が体内に密蔵される)。
11. 身広長等相(しんこうじょうとうそう) 身体の縦広左右上下の量が等しい(身長と両手を広げた長さが等しい)。
12. 毛上向相(もうじょうこうそう) 体の全ての毛の先端が全て上になびき、右に巻いて、しかも紺青色を呈し柔軟である。
13. 一一孔一毛相(いちいちくいちもうそう) 身体の毛穴にはすべて一毛を生じ、その毛孔から微妙の香気を出し、毛の色は青瑠璃色である。
14. 金色相(こんじきそう) 身体手足全て黄金色に輝いている。
15. 丈光相(じょうこうそう) 身体から四方各一丈の光明を放っている(いわゆる後光(ごこう))。光背はこれを表す。
16. 細薄皮相(さいはくひそう) 皮膚が軟滑で一切の塵垢不浄を留めない。
17. 七処隆満相(しちしょりゅうまんそう) 両掌と両足の裏、両肩、うなじの七所の肉が円満で浄らかである。
18. 両腋下隆満相(りょうやくげりゅうまんそう) 両腋の下にも肉が付いていて、凹みがない。
19. 上身如獅子相(じょうしんにょししそう) 上半身に威厳があり、瑞厳なること獅子王のようである。
20. 大直身相(だいじきしんそう) 身体が広大端正で比類がない。
21. 肩円満相(けんえんまんそう) 両肩の相が丸く豊かである。円満。
22. 四十歯相(しじゅうしそう) 40本の歯を有し、それらは雪のように白く清潔である(常人は32歯)。
23. 歯斉相(しさいそう) 歯はみな大きさが等しく、硬く密であり一本のように並びが美しい。
24. 牙白相(げびゃくそう) 40歯以外に四牙あり、とくに白く大きく鋭利堅固である。
25. 獅子頬相(ししきょうそう) 両頬が隆満して獅子王のようである。
26. 味中得上味相(みちゅうとくじょうみそう) 何を食べても食物のその最上の味を味わえる。
27. 大舌相(だいぜつそう) 舌が軟薄で広く長く、口から出すと髪の生え際にまで届く。しかも、口に入っても一杯にはならない。
28. 梵声相(ぼんじょうそう) 声は清浄で、聞く者をして得益無量ならしめ、しかも遠くまで聞える。
29. 真青眼相(しんしょうげんそう) 眼は青い蓮華のように紺青である。
30. 牛眼瀟睫相(ぎゅうごんしょうそう) 睫が長く整っていて乱れず牛王のようである。
31. 頂髻相(ちょうけいそう) 頭の頂の肉が隆起して髻(もとどり)の形を成している。肉髻(にくけい)。
32. 白毫相(びゃくごうそう) 眉間に右巻きの白毛があり、光明を放つ。伸びると一丈五尺ある。
何を食べても食物のその最上の味を味わえる「味中得上味相(みちゅうとくじょうみそう)」というのも相の一つとして入っているのも面白い。
「一貫して象徴的で感覚的に偉人化し、超人化しようとされているが、中には造形不可能なものもある。これら瑞相はさらに細かく八十種にわたり述べられ、螺髪が右旋(カール)する右旋婉転や頸に三道が見られること、また鬚髭(鬚・髭)等の細部にわたる八十種好として示される。二九、の真青眼相は虹彩を赤く、両の眼角を青くと常人とは逆に表わされているが、これも仏と凡夫との隔たり」
を際立出たせようといういとかもしれない。当然ながら,仏像に,
http://buddha.anavi.jp/?eid=46
それを見ることができる。たとえば,鎌倉の大仏について,
http://www.kotoku-in.jp/characteristic.html
では,その例をあげている。
八十種好
というのは,
http://blogs.yahoo.co.jp/hakucmi/4721912.html
にあるように,頭から足の裏まで全てにわたって,
「三十二相をさらに細かく記したもの。見える部分から見えない部分」
について,細かく言語化している。
たとえば,
鼻高不現孔 鼻が高く、孔が正面からは見えない。
眉如初月 眉が細く三日月のよう。
身堅実如那羅延 身体が筋肉質で、天上の力士のように隆々としている。
身清潔 身体が常に清潔で汚れることがない。
一切衆生見之而楽 誰でもお会いすれば楽しくなる。
耳輪埵 耳の外輪の部分が長く垂れている(俗に福耳)。
耳朶環状 耳たぶ(耳朶)に穴が空いている。
等々。
三十二相八十種好の「相」「好」とをとって,「相好を崩す」などという「相好」の語源となっているようである。相好は更に転じて,顔かたち・表情のことを指す。
しかし,これによって,三十二に特別の意味が生じたが,元々「三十二」という数を列挙したのには,どんな意味があるのだろうか。元来,
「釈迦像がインドで制作されはじめてまもなく起った考え方」
とあるので,何か意図とねらいが,あったに違いないのだが。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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