2015年09月10日
かりそめ
かりそめは,
仮初(め)
とか
苟且
と当てる。
その場限りである・こと(さま)。一時。 「 かりそめの縁(えにし)」 「 かりそめの恋」等々,
さして重大でないこと。ふとしたこと。また,そのさま。 「 かりそめの病」 「かりそめに思ひたちて」等々,
軽々しい・こと(さま)。おろそか。ゆるがせ。 「 かりそめにする」 等々,
といった意味と,使われ方をする。語源的には,
「仮+染め」で,試し染めの意。まにあわせの,ちょっとしたなどの意に転じる,
という説と,もうひとつ,
「仮様」の音韻変化で,カリサマ,カリソマ,カリソメと変った,とする。一時的という意味になる,
仮初は,当て字,というが,苟且は,
こうしょ
と訓み,
その場かぎりの間に合わせであること,
かりそめなこと,
と,「かりそめ」という意味で使うが,中国語の苟且は,
いい加減な(苟且偷安)
とか
目先の安逸をむさぼる,
あるいは,
(男女の関係について)いかがわしい(苟且之事)
とか
いかがわしいこと.
という意味らしいと,
http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/cj/8685/m0u/
にあり,苟且をかりそめと訓ませる意味とは少し違うのではないか,と思ったが,手元の『字源』では,
かりそめ
なおざり
と意味が出ていて,どうも少し混乱させられる。しかし,「苟且」の「苟」の字自体は,「いやしくも」とも訓ませるが,
かりそめ
まにあわせ
という意味で,「苟」の「句」は,
勹(つつむ)+口
の会意文字で,ちいさくくぎって丸める,という意味。「艸」をつけて,
草で縛って丸める,
小さくまとめる,
というのが原義。因みに,「且」は,
物を積み重ねた形を描いた象形文字で,ものを積み重ねること,転じて,重ねての意の接続詞となる,
とあり,
物の上に仮にちょっとのせたものの意から,とりあえず,間に合わせの意にも転じた,
ともあり,「且」の字自体にも,かりそめ,一時的の意味がある。その意味では,「かりそめ」に苟且の字を当てたのは,中国語の意味からそう訓むませた,というのが妥当で,中国語では,その意が転じたのだと考えることができる。
ところで,「かりそめ」の原義について,『古語辞典』は,
仮り染めの意,本式ではなく,ほんの一時的なものとして色をそめること,すぐ色あせて消えやすい,
と,「仮り染め」説を取る。『大言海』は,
かりさまの転,ひさめく,ひそめく,あめ,あま,
と,例をあげて,「かりさま」説を取る。語源はともかく,いまは,多くは,
かりそめにも
という使われ方が残る程度ではないか。そこでは,
(あとに打消しの語を伴って)打消しの意味を強める語。決して。仮にも。「かりそめにも法を犯してはならない」
わずかでも。いささかでも。仮にも。「かりそめにも逆らう者があれば罰せられる」
十分でないにせよ,事実としてそうであることを表す語。いやしくも。仮にも。「かりそめにも常識ある大人である以上、そんなまねをするはずがない」
等々。しかし,「かりそめ」が使われなくなるにつれて,その語の語感から,一時的とか応急とか,一時しのぎ,という意味よりは,仮に,という意味が強調すると,
泡沫
夢幻
幻
といったニュアンスが滲んでくる気がする。
かりそめの恋
というとき,そこには,一時的というニュアンスとは違う語感がある。
移ろいやすく,壊れやすい,
というはかなさが際立ってくるような気がしてならない。それが仮り染めにしろ仮様にしろ,原義のもつ意味合いに近いのではないか。
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
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