2015年09月24日

ゆらぎ


吉田たかよし『世界は「ゆらぎ」でできている―宇宙、素粒子、人体の本質』を読む。

世界はゆらぎでできている.jpg


「この世にあるすべての物質は,常に揺らいでいる」

という文章で始まる本書は,「ゆらぎ」様々にわたって紹介していく。

ひとつは,量子力学の「粒子と波動の二重性」。しかし,

「では,物質がミクロの世界で波になっているというのは,具体的には何がゆらいでいるのでしょうか。…方程式を完成させたシュレディンガー自身でさえ,よく分かりませんでした。」

というしろもの。その答は,マックス・ボルンの,

「物質がその場に存在する確立」

が揺らいでいる,というもの。それに対して,アインシュタインが,

「神はサイコロを振らない」

という名言を残して,受け入れなかったのは有名な話。しかし,今日は,ボーア研究所の提案した,

コペンハーゲン解釈,

が大勢派になっている。つまり,「観測するまでは粒子がどこにあるか確率でしかわからないのに,観測した瞬間に位置が確定する」という考え方である。それを,アインシュタインは,

「私が見るまでは,月はあそこになかったのか」

と,コペンハーゲン解釈を皮肉っている。コペンハーゲン解釈に異をとなえる立場については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/421586313.html
http://ppnetwork.seesaa.net/article/416694519.html

で,触れたところだ。

こうした「ゆらぎ」の究極は,「超ひも理論」であろう。物質を構成する最小単位の素粒子,10の-35乗という極小の世界には,34から36の素粒子がある,と想定されている(重力相互作用を生みだすグラヴィトンだけは輪になっているが,それ以外はひも)。この違いは,

「ひもの揺らぎ方が異なるために,別々の素粒子として観測される」

とされる。この説によれば,

「物質の存在自体も,その本質は揺らぎにある」

ということになる。この素粒子を構成するミクロのひもは,

「そもそも太さはないので,構成している材質もありません。ただ長さのみを持っていて,それが揺らいでいるだけです。(中略)ただ,揺らいでいるものは,点でもなければ面でもなく,短いながらも間違いなく線状のものです。点は0次元,面は2次元ですが,素粒子はどちらでもなく,1次元の線状のものが揺らいでいるのです。」

この証明は,現在の観測技術では難しいとされているが,宇宙の観測にわずかな期待がもたれている。

「長い宇宙の歴史の中で,最もエネルギーの水準の高かったのは,間違いなくビックバンの直後です。最新の研究では,現在,ビックバンから138億年が経過していると考えられていますが,宇宙のどこかに宇宙ひもと呼ばれる当時の痕跡が残っている可能性があり,これを発見すれば,超ひも理論が正しいと証明できるかもしれないのです。」

宇宙生命学については,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/423899201.html

で触れたが,

「このミクロの揺らぎがもとになり,現在の宇宙全体の構造ができあがったということがわかってきた」

と,著者は続ける。銀河の配置には,その存在の粗密に揺らぎがある。それを,

泡構造,

と呼ぶが,つまり,

「何も存在しない,空洞のような部分を取り囲むように銀河が存在し,さらにまた隣の空洞のような部分を取り囲むように銀河が存在し,さらにその隣も同じような構造になっている」

という。それは,

「少なくとも宇宙が誕生してから38万年後には,物質の密度にほんのすこしだけ場所によって濃淡の差があったということです。いわば,こうした空間的な密度の揺らぎが種となって,宇宙の泡構造が育ったと考えられています。」

しかも,ビックバンを証明するマイクロ波背景放射には,周波数に揺らぎがあったことが発見される。それは,

「温度に換算すると,わずか10万分の一程度の不均衡さ」

である。

「火の玉のような状態だった誕生まもないころの宇宙は,物質がまったく均衡に存在していたというわけではなく,ごくごくわずかではありますが,濃いところと薄いところがあった」

しかし,その揺らぎが大きければ,今のような宇宙にはなっていない。

揺らぎとは,ある意味,不均衡ということである。たとえば,心臓は,揺らいでいる。

「心臓の鼓動がまったく揺らがず,完全に一定のリズムを刻み続けている」

としたら,脳死か重度の心不全,と言われる。生きているということは,振幅がある,ということだ。当たり前だが,妙にほっとさせられる。固定するということは,死んでいる,に等しいのかもしれない。

人は,

概日リズム
サブ概日リズム
概潮汐リズム
概8時間リズム
概2日リズム
概月リズム

と様々な周期リズムで,周囲の環境に適応するあそびを持っている。だから,人は,1日を,24時間ではなく,25時間で設定しているのも,そのせいらしいのである。

参考文献;
吉田たかよし『世界は「ゆらぎ」でできている―宇宙、素粒子、人体の本質』(光文社新書)
吉田たかよし『宇宙生物学で読み解く「人体」の不思議』 (講談社現代新書)








今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
posted by Toshi at 05:12| Comment(0) | 書評 | 更新情報をチェックする
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