2015年09月25日

沽券


沽券(估券)

は,「沽」は売る意と注記して,

土地・山林・家屋などの売り渡しの証文。沽却状。沽券状。
売値。
人の値うち。体面。品位。

といった意味が載る。『大言海』には,「沽券」の項に,

沽却

を見よとある。そこに,『論語』の,「子罕編」が引用されている。

子貢曰く,斯(ここ)に美玉あり,匵(ひつぎ)に韞(おさ)めて諸(これ)を蔵せんか。善賈(ぜんこ)を求めて諸を沽(う)らんか。子曰く,沽らんかな,沽らんかな。我は賈を待つ者なり」

要は,売却の意味,というわけだ。売券状,沽券状,つまり,

「地所,屋敷などの売買,所有を証する券(てがた)」

とあって,

「値打ちの意味から転じてヒトの資格,人柄,品位」

という意味になったとする。

「沽」は,

「ためておいた商品を売ったり,買ったりする」

意味だが,「估」は,

商い,値段を見積もる,

という意味があり,「沽券」「估券」と当てるうちに,その「価値」の意味がにじみ出てきた,と考えられる。

ウィキペディアによると,「沽券」は,

「町役人、五人組が立会いのもとで土地の売買が行われ契約書である沽券が作成されたので沽券は土地権利証としても機能した。契約書であるため土地の明細の他に売買代金も記載されたので土地の価値を証明するもの」

とされた,という。その意味で,転じて使われるようになった,

沽券に関わる

という慣用句には,「沽券」が,

「町役人、五人組が立会いのもとで土地の売買が行われ契約書である」

というお墨付きのある,空手形ではない,という意味が強く込められている。見かけだけの体面の意味に,スライドさせるのは,如何なものか。つまり,

空証文,
空手形,

ではない,価値の保証書付き,という意味がある。

あいつに頭を下げるなんて,沽券に関わる,

などと軽々にいう輩は,体面,面子の中身が空っぽの奴が多いのは,皮肉だろうか。

沽券の類語は,

面目,
対面,
世間体,
面子,
威信,
気位,

といった,外面が多い,その人が突っ張って立てている,

見え,
見栄え,

のような,あるいは,

プライド,

といったものであって,それは主観的な思い入れに過ぎない。プライドについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/420258923.html

で触れた。それよりは,本来の,人としての,

矜持,
品位,
尊厳,
品格,
気品,

といったものの方が,大切だし,それは,声高に叫び立てたりせずとも,その存在そのものが,屹立して顕現する。そういう国でありたい,と思う。

そういうのを,心映え,という。心映えについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/388163582.html

で書いた。いま,日本は,それとは真逆の,騒々しい面子を叫び立てる国になっている。明治維新以降この手の軽い面子傾向が強く,戦後消えたと思ったらまたぞろ出てきた。こういう時は,中身がない時と,歴史が教えている。







今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
ラベル:沽券 估券
posted by Toshi at 05:14| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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