2015年10月02日
悪びれる
悪びれるは,
悪怯れる
とも書く。辞書(『広辞苑』)によると,
多く下に打消しの語を伴って
とあり,
気おくれがして卑屈な様子をする,
未練がましく,ふるまう,
わろびる,
とある。因みに,『大言海』は,
物言いかねて,何となく屈す,また醜き状となる,
臆して醜くなる,
醜態,
とあり,『保元物語』「為朝最期事」より,
「かやうに随分勇士共は,わろびれて進みえず」
と引用する。本来は,どうやら,相手の,
臆した,
みっともない,
様子を指していたらしい。しかし,昨今は,否定形を伴って,
悪びれない,
悪びれた様子もない,
悪びれる風もない,
悪びれもしない,
といったふうに,その様子を非難する方に転じている。悪びれる【わるびれる】の例文(使い方)として,
まったく悪びれた様子がない(謝らない・謝罪しないの表現・描写・類語)
悪びれた感情になる(恐怖・不安の表現)
悪びれる(恥ずかしいの表現)
といった使い方がある,とされるが,
まったく悪びれた様子がない,
という意味で,本来謝罪しなくてはならない状況にあるにもかかわらず,
謝らない
謝罪しない,
ことを非難する言い回しが多い。要は,
恥を恥とも思わないでいるさま,
とか,
やったことを反省するそぶりもない,
という意味で,
ふてぶてしい,
とか,
いけしゃあしゃあ,
といった含意の表現なのである。類語で言うと,
恥じる様子もない
厚かましい
厚顔無恥
鉄面皮
ふてぶてしい
面の皮が厚い
といった,何がしか悖る行為をしておきながら,
しれっとしている
あっけらかんとしている
ケロリとしている
というのが,「悪びれない」の意味の外延だが,厚顔,厚かましいには,単に,
鈍感,
というだけではない,人として,どうなのか,という咎めが入っている。それは,
倫理,
といっていい,それは,
人として,どう生きるか,
人として,どうあるべきか,
といったものに背くにもかかわらず,それに何の痛痒も感じないらしい無神経さを咎めている。しかし,咎める側と本人のギャップが大きいことに,昨今つくづく思い至る。
愧ずべきことと,
恥ずべきことと,
一向に思っていないらしいのである。こういうのを,
荒廃,
と呼ぶ。いまその坂道を転がり落ちているが,そう思わない連中にとっては,
馬の面にしょんべんなのだろう。
だから,よく,
おめおめと,
と,こちらには思えるところに,平然と立っていて,悪びれるところがない。
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