なおざり


なおざりは,

等閑

を当てる。

あまり注意をはらわないさま,いいかげんにしておくさま。本気でないさま。おろそか。かりそめ。
ほどほどで、あっさりしているさま。

http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/162782/m0u/

には,「なおざり」と「ないがしろ」について,

「『学業をなおざり(ないがしろ)にする』のように、いいかげんにする意では相通じて用いられる。『なおざり』は、きちんとすべきことを手を抜いていいかげんにするさまをいう。『なおざりに聞き流す』『なおざりにできない問題』。『ないがしろ』は大切にすべきものを粗略に扱う、また無視するさまをいう。『親をないがしろにする』のように用いる。類似の語の『ゆるがせ』は『なおざり』と同じく、手を抜いておろそかにするさま。『一刻もゆるがせにできない』のように用いる。

とある。ゆるがせについては,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/425702421.html?1441915780

に触れた。

「なおざり」の語源は,二説あるらしい。

ひとつは,ぱりそのまま)ゾ+アリ」で,なおもそのままであるという意。いい加減である,おろそかにするの強調。

と,

いまひとつは,そのまま)+サリ(避り・去り)」で,何もしないでもとのままで避けている意。おろそかにする気持ちを表す。

由来語源辞典は,

http://gogen-allguide.com/na/naozari.html

「『なお』は,以前の状態が引き続いている状態を示す副詞『なお(猶)』,『ざり』は係助詞『そ』に動詞がついた『あり』の『ぞあり』であろう。『ざり』を『さり(避・去)』で,手を打たず放っておく意味との見方もあるが,副詞の『なお』にその意味が含まれているため,『ぞあり』と考える方がよい。なおざりは,『たいして気にとめない』が原義で,転じて,『本気でない』『おろそかにする』という意味になった。漢字『等閑』は,同義の漢語『とうかん』を当てたものである。」

と,前説をとる。『大言海』は,

「直(なお)タダぞありの約と云う。等は待つ也。閑は離也,。隙也」

と,独自説を立てる。それにしても,なおざりに似た語が,

おざなり,

なおざり,

おろそか,

ないがしろ,

等々とある。

http://squab.no-ip.com/wiki/167

に,こんなのが,載っていた。

「漢字で書くと、等閑と御座成り。『なおざり』はよく注意を払わないことで対応がおろそかになること。『おざなり』は意識して中途半端、いい加減にやっつけること。
いいかげんにして軽く済ませるのが『おざなり』、いいかげんにして避けて放置するのが『なおざり』。物事の達成の要不要自体をおろそかにするのが『なおざり』、達成には真摯な態度で接してはいるもののその質を問わないいい加減さは『おざなり』。」

と。結果は同じでも,放置されるよりは,少しでも進む方がいいか,それくらいなら放置されていた方がましとするか,何だか,究極の選択。

「おざなり」は,

「お+座+なり(そのまま)」

が語源で,その場を取り繕うだけのいい加減な処置,という意味。

「ないがしろ」は,「蔑ろ」と当てるが,

「無き+が+しろ(代・材料・対象)」

で,他人の目を気にしない気ままの意。転じて,あってもなかったように軽く扱う,意。『大言海』は,

無きが代(しろ)の音便,

と簡潔。

眼中に人なきこと,あなどり,軽んずること

と,意味を載せる。『語源由来辞典』

http://gogen-allguide.com/na/naigashiro.html

は,

「『無きが代(しろ)』がイ音便化された語。『代(しろ)』は『身代金』にも使われるように,『代わりとなるもの』を意味する。『代』が無いということは,『代用の必要すらないに等しい』という意味である。つまり,人がないようなものとして扱うことの意から,軽視したり無視をすること」

とある。それ自体が,なおざりやおざなりにはそのままつながらないが,他人の目を気にせず,いい加減にしたり,だらしなくしたりする,ということになるのだろう。で,

「しどけないさま,むぞうさなさま」

という意味になる。それにしても,なぜ「蔑」の字を当てるのだろう。「蔑」は,

「大きな目の上に逆さまつ毛がはえたさまに『戈』(刃物)を添えて,傷つけてただれた目を表した。よく見えないことから,転じて,眼にも留めないという意に用いる」

とあるから,実に「ないがしろ」にぴったりだ。

それにしても,こうした言葉の使い分けが,もう出来なくなっている。この微妙な言葉のニュアンス差がわからなくなっている,ということは,それを表現する必要がなくなったということで,その分,機微に疎くなってきているのではないか。

参考文献;
増井金典『日本語源広辞典』(ミネルヴァ書房)









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