2015年10月28日
得たり賢し
最近は,あまり使うのをきかないが,
得たり賢し,
という言い回しがある。辞書(『広辞苑』)には,
「物事がうまくいって得意になったときに発する語。しめた,これはありがたい」
といった意味になる。
「多く『と』を伴って副詞的に用いる」とあり,「『得たり賢し』と,云々」という言い方になるのだろう。
物事が自分の思いどおりになったときの喜びの気持ちを表す語,
ともあり,「得たり賢しとばかり攻めたてる」と言った使い方になる。しかし,
「動詞ウ(得)の連用形に助動詞タリが付いた形,感動的に使う」
と言われる,
得たり,
自体が,
うまくいった,しめた,
という意味なので,「賢し」は,言葉のリズムとして付けたしたという感じなのではないか。
得たりおう,
とも言うが,
得たりやおう,
が,「心得て受け止める時,またうまく仕遂げたときなどに発する語」で,
上手くいったぞ,
という意味で,「得たりやおうと立ち上がる」と言った使い方をする。
得たりや応う,
と表記するようだから,応答し合う,えいえいおう,に似た使い方なのか,と想像してしまう。
『古語辞典』には,
「エタリに感動の助詞ヤと感動詞のオウの続いた形」
として,
「得たりやおうとて,十騎の兵,轡を並べて懸けたり」
という例文が出ている。『大言海』は,
「おうは,唯(お)の延,やと共に,感動詞なり」
として,
「手ごたえして,はたと中(あた)る,えたりやおうと,矢さけびをこそしてんげれ」
という例文を載せる。その言葉がもつ,場面というかニュアンスが伝わってくる。
因みに,
えいえいおう,
は,
「『えいえい』という大将の掛け声に呼応して軍勢一同が『あう(オオ)』と声を合わせ、これを三度行なったという。『えいえい』は前進激励の『鋭』、『おう』はそれに応じる『応』の意であるという。」
あるいは,
「大将が三度弓杖(ゆんづえ)で地面を叩き、『えい、えい、えい』と三声の鬨をあげ、家来が声を合わせ、『応(おー)』と応える」
ともある。この場合も,「えいえい」自体が,
力を入れた時発する声,
とある。弓を引いたり,力をいれたりするとき,「えい」という声を発する,それである。その他に,
呼びかける声,
とあり,「えいえい」と掛けて,「おう」と応えることで,鬨の声になる。これは,
武家の作法,
とされており,
「勝凱をつくることは、軍神を送り返し、奉る声なり」
とあるように,戦勝祈願と戦勝御礼の意味があるようだ。「えいえいおう」も,
「『訓閲集』の表記では、『えい』も『おう』も異なり、『曳(大将が用いるエイ)』『叡(諸卒が用いるエイ)』『王』の字を用いており、また、軍神を勧請する際、『曳叡王(えいえいおう)』と記し、大将が『曳』と発した後に、諸卒が『叡王』とあげるとしており、声に関しては、『初め低く、末高く張り揚げる』と記している」
とあるなど,まあ,一種の
験担ぎ,
の色合いがある。
鬨を合わせる
鬨の声を挙げる
という言い回しがあるが,軍勢が揃って大声で「おう」と叫ぶことを指す。ある意味結束と士気を鼓舞するためにするので,
出陣時,
攻撃開始時,
敵が鬨を挙げた時(それに応じて),
戦勝の時,
凱旋の時,
等々にする。作法だから,流派によって多少の差異があるらしい。こんなことまでも,何々流と,何でも,個人ベースの相伝の秘儀にしてしまう,日本的と言えば日本的な兵法になるのだろう。
参考文献;
笹間良彦『図説 日本戦陣作法事典』(柏出版)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8B%9D%E3%81%A1%E9%AC%A8
ホームページ;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/index.htm
今日のアイデア;
http://www.d1.dion.ne.jp/~ppnet/idea00.htm
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください