2015年11月03日

なずむ


なずむは,

泥む
あるいは
滞む

と当てる。 意味は,辞書(『広辞苑』)には,

行きなやむ,はかばかしく進まない,滞る,
離れずに絡み付く,
悩み苦しむ,気分が晴れない,
拘泥する,こだわる,
かかずらわって,そのことに苦心する,
執着する,思いつめる,惚れる,
なじむ。なれ親しむ,

とあるが,他を見ると,その他に,

植物がしおれる。生気がなくなる,

という意味もある。語源は,

「ナ(慣れ)+ツム(動かず)」

で,物事が進行しない,,はかばかしく進まない,意で,心がそのことから離れないことを言う,とある。その意味では,

http://ppnetwork.seesaa.net/article/428855699.html?1446323502

で述べた,「馴染む」とつながるところがある。「暮れなずむ」という言い方は,日が暮れそうでなかなか暮れない,というもともとの「泥む」に近い使われ方なのかもしれない。

本来,行き悩む,はかどらない,という意味から,何かに捉われている心の内にメタファとして使われ,そこから,悩みや苦心,執着,馴染むへと広がっていったのはわかるが,萎れるは,また別の系統で意味が広げられた感じがする。敢えて言えば,「行き悩む」が「生き悩む」あるいは「育ち悩む」とスライドさせれば,つながらなくもない。

『古語辞典』をみると,「なづみ」で出ていて,

「ナヅサヒと同根。水・雪・草などに足腰を取られて,先へ進むのに難渋する意。転じて,ひとつことにかかずらう意」

と注記がある。因みに,「ナヅサヒ」を見ると,「ナヅミ」と同根とあって,

水に浸る,漂う,
(水に浸るように)相手に馴れまつわる,

とあり,さらに,「なづさはり」という言葉があり,「ナヅミと同根」として,なじみになる,という意味が載る。「なづみ」の意味は,上記とほとんど変わらないが,

惚れること,
恋着,

が,「行き悩む」「まつわりつく」「ひとつのことにとらわれて悩む」とは別途に意味が立てられている。あるいは時代の違いかもしれないが,辞書だけからはわからない。

滞る,
閊(つか)える,
行き悩む,
拘る,
執着,
拘泥,

というのが類語だか,泥む,という言葉は,ちょっと独特の語感がある。拘泥というのと,泥むというのとでは,前者は頑なさがあるが,後者には,馴れる感じが付きまとう。元の意のもつ,

行き悩む

行き兼ねる

と並べてみると,

躊躇

というニュアンスが出る。「~(し)兼ねる」というとき,そこには,ただ,

~することができない,

という「不可能」とか「不出来」ということと同時に,

~することに耐えきれない,

という心情が含まれている。「兼ね」には,「あちこちに気を使ってヒトの気持ちをおしはかる」「憚り思う」というニュアンスがある。「泥む」というときの心境と重なるような気がする。

ただこだわっているのではなく,そこに愛着というか,こだわるものがある,という感じであり,滞るという外見ではなく,おのれを滞らせている内面が,躊躇いに似てくる。

「泥」の字の,「尼」は,

尸(ひとのからだ)+比(ならぶ)の略体」で,

人が相並んで親しむさま,
人と人とが身体をよせてくっついたさま,

を示す会意文字(この含意は「昵懇」の昵に残る),

と言い,「水」をつけた「泥」は,

ねちねちとくっつく,

という意味になる。そこから,

ねちねちとくっついて動きが取れない,

という意味を含み,「拘泥」という用例につながる。いつも思うのだが,先祖たちは漢字に熟知していた。漢字を当てることで,和語が奥行と陰影をもった。「泥」の字を,なずむに当てたのには,深い意味がある。



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posted by Toshi at 05:30| Comment(0) | 言葉 | 更新情報をチェックする
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